「萌え」の起源

今ではそれほど聞かないものの、日本のアニメは国内外問わず人気は根強く、独創的な画力と面白さに定評がある。その影響もあってか実写版では日本・ハリウッド問わずにリメイクされているなどアニメにおける可能性も広がり始めたと言えるが、あまりにリアル過ぎるのもアニメ好きの私としてはどうかと思う。

昨今では「萌え」を中心としたアニメも続々できてきており、その定義について哲学的に考察を行う本も出始めてきている。本書は哲学ではないが、アニメ作品からチャンバラ映画に至るまでいわゆる「メディア」におけるサブカルチャーの観点から考察を行っている。

第一章「手塚治虫とグローバリズム」
一般的な漫画は明治時代の頃からあったのだが、それについて最も発展させたのは手塚治虫である。彼のデビュー作は昭和22年に発売された「新寶島」である。戦後の漫画において少年・少女漫画双方言えることだが、手塚治虫の活躍なくして語れない。
単行本における漫画が誕生したのは戦後であるが、新聞や雑誌の4コマ漫画などは戦前もあり、有名なものでは田河水泡の「のらくろ(1931年)」がある。
手塚作品で有名を言うと枚挙にいとまがない。「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「どろろ」「ブッダ」「三つ目がとおる」など私も子供の頃よく読んだ。

第二章「変身するヒロインの系譜」
土曜か日曜の朝にやっていた特撮ヒーローを思い出すのだが、本書はそれについて触れていないため割愛する。
返信するヒロインというと「秘密のアッコちゃん」や「キューティーハニー」といったものを想像するが、本章ではそれだけではなく、実写による「男装の麗人」について取り上げている。漫画で言ったら「リボンの騎士」や「ファウスト」があり、実写では「歌姫」と呼ばれている美空ひばりが昭和32年に「ひばりの三役/競艶雪之丞変化」、さらには松山容子、志穂美悦子などがある。

第三章「「萌え」とは何か」
以前サブカルチャーにまつわる書評のなかで「萌え」について古文にある「萌ゆる」という文章から出てきており、恋愛などの感情が育まれ表に出てくると書いたことがある。この考えについては変わることはない。
本書は「萌え」の意味というよりも「萌え」そのもののヴァリエーションの変遷について書かれており、最近から言われ続けていた「萌え」が「メガネ」「獣耳」「ツンデレ」「絶対領域」などが「萌え」の源となる「草木が萌える」の如く、枝葉のように成長していったと言える。

第四章「和声エンターテインメントの不思議な世界」
「和声エンターテインメント」というとなかなかピンとこない人もいるようだが、ヒーローやヒロインものを観る時にほとんど共通して言えるのが「人類に平和をもたらす」というようなものがある。最近では「ご当地ヒーロー」のようにとある地域を守るというものもあるようだが、日本のアニメや特撮の傾向として多いのがそれである。また自分を犠牲にして主人公を守るというシーンも多いが、これは武士道精神につながるものがあるという。

第五章「ここがヘンだよ日本のヒーロー」
「ヘン」と言われる所はいくつか挙げられているが、本章の冒頭で取り上げられているものには「男同士の友情」が強く表れているところである。「侠気」に近いところも否めない。その最たるものが最近実写化された「DRAGON BALL」である。それだけではなく「旅」にまつわるものもあり、歌に時代劇にドラマなどに挙げられている。こちらでは「水戸黄門」が最たるものであろう。

第六章「マンガを支えるテレパシー文化」
「以心伝心」という四字熟語が存在するが、日本人は空気や表情からメッセージを読み取るのが他国の人より長けている。本書で言う「テレパシー」に通底するものがそこにはある。また心に伝わるものもあれば、宇宙人のように本当にテレパシーでもって会話をするという映画も好まれる傾向にある。

「アニメ」や「漫画」は様々な観点から考察が行われてきたわけであるが、本書はそこにある「萌え」を日本の漫画・アニメの傾向に準えながら見出している。アニメや漫画に限らず映画や小説にまで裾が広げられているためアニメや漫画にはまっている人たちにとっては新しい発見があり、そこから様々な世界に入り込めるように仕向けているように思えた。