就活のバカヤロー

「It’s a comedy!(これは茶番だ!)」
これは東京裁判において思想家の大川周明が精神異常の疑いがあるとみられ(後に「梅毒脳症」と判明)退廷させられる直前にはなった言葉である。この裁判は結局勝者からの一方的な裁きによるものであり、茶番であると見抜いたのだろうか、もしくは精神異常により発狂して放った言葉なのだろうか、今でも論争は続いているが。
これから大学3年生の皆様は厳しい就職活動を始められることである。その中で死亡した企業、業界に入ればいいのだが、先日のニュースで大学4年生の就職内定率が過去最大の下げ幅であったというのがあった。昨年の同時期には「内定取り消し」のニュースが相次ぎ、それらの世代の就職活動に悪影響を及ぼしている。本書はその就活の現場とその茶番劇を暴きながら、若者にとって、企業にとっての就活の、本当の意味について考えた一冊である。

第1章「就活生はイタすぎる」
章題からしてまさにその通りといえる。自己PRを考えたり、自分の性格からどのような業界にはいるかという自己分析があったり、大学生の時にがんばったことを話したりして、面接官が就活性のどこをみているのかというのが知りたくなってしまう。
私も就職活動を経験してきた身であり、当時は小樽から札幌、または小樽から飛行機を使って東京に行ったり、したことがあった。
悲しきかな自己PRについてこう書けばいいなどの本は五万とあり、それに倣うかのように書いてしまう。学生にとっても採用担当にとってもうんざりしてしまうようなことがたくさんあるという。例えば質問における返答も学生側からの質問でも、である。

第2章「大学にとって「就活はいい迷惑」」
大学は学問を研究する場である。しかし、2004年以降国立大学行政法人化され厳しい状況に立たされ、商学部などでは産業との連携において学問を行うことで活路を見出して行こうとする学校もある。
さて就職活動は大学にとっては前述のようにそのことにより疎かになるということで「いい迷惑」だと思っているという。
特に大学3年生は論文や研究のテーマを決める所もちらほら出てくるため、インターンシップや就職活動の企業説明会、面接などによって講義やゼミを欠席し、せっかく学べる機会を水泡に帰してしまうというのが大学側の意見として挙げられる。
しかし大学を卒業した後、その知識をさらに深めるために誰しもが大学院に進学をするわけではない。仕事の上で役に立つことはあるのだが、それ以上に働くということが大事であろうというのが企業側の意見である。双方の意見の隔たりは縮まるようでなかなか縮まらないというのが現状であり、これからもそうなるのかもしれない。

第3章「企業の「採活」の真相はこうだ」
少し前の話であるが、採用期間となる4月1日前に有能な人材を引き抜いて内定者をいち早くそろえるといういわゆる「青田買い」というのが存在した。
しかし経団連と国立大学行政法人との協定により、4月1日以降にするようにという通達があったのだが、いかんせんそれを実行している企業もあるが、経団連に所属していない企業は無視であるのが現状である。
それだけではない。採用活動は筆記試験や面接ばかりではなく、企業説明会、さらにはインターンシップに至るまで「採用活動(採活)」が行われているといっても過言ではない。
さらに就活生を引きつけるようなレトリックも存在しており、若い私たちであればやりがいがあることや福利厚生、チャレンジングなことをしてくれるなど、様々な裏があることを忘れてはいけないがこれに気づける人がいるかどうか疑わしいところでもある。

第4章「インターンなんてやりたくない」
第3章にて「インターンシップ」も採用活動の一環となっている企業もあると書いてあったのだが、ではこの「インターンシップ」はどのような効果をもたらしてくれるのかと言うのも考えなくてはならない。実際にこの「インターンシップ」が「採用活動」と直結している大きな理由としては、「学生の囲いこみ」というのがあるというが、学歴差別というのがあるだけでこれから就活に向けた影響はそれほど無いのだという。

第5章「マッチポンプで儲ける就職情報会社」
インターネットが飛躍的に進化され、就職活動においてもインターネットを無くしては無力に近いものであったことは大学時代に痛感したことである。大学時代私はパソコンはあったが「Windows98」がOSであり、しかもインターネット環境がなかった。インターネット環境のある大学のパソコン室か、ゼミ室しかインターネットを観ることができなかった。ちなみにエントリーシートや履歴書もアルバイト終了後に大学に戻って書いたほどであった。下宿に返ったのは早いときは深夜の1時、下手したらゼミ室で一夜をあかしたということは何度かあった(実は就活前後もゼミの論文やレポート作成のために同様のことがあった)。
インターネット上ではリクナビや日経ナビ、マイナビなど就職情報サイトなど数多くお世話になった。企業の説明会から、エントリーシート提出に至るまでいろいろな側面でお世話になった。しかしこの就職情報サイトはほぼ寡占状態にあり、採用に関わる利益でかなり賄われている。
しかし就職情報サイトも最近では不況の余波による採用窓口の減少により期待されていた利益を下回っているのだという。就職情報サイトも「経済」という一つの怪物に踊らされているのだろうか。

今の時期、大学3年はいよいよ就職活動の準備を始め、大学4年は焦りを感じている。しかしこの就職活動はある種の茶番劇のように著者は思えるのだという。私も今となってみたら、今の職業に入れてよかったのだが、就職活動は果たしてよかったのかというと疑わしいし、就職活動自体に疑問を抱くこともあった。就職をしたいという考え、もしくは修飾という言葉が続く限りこの茶番激発付くのかもしれないが、それを断ち切るというのもなくてはならない。ではそれはいつの日になるのか、定かではない。