ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話

本書ほど「爆笑」と「痛快」を同時に思った一冊はなかった。
私たちが良く聞くマネーの話に踊らされてしまい、しまいには損失を被っていたという笑えない話というのが後を絶たない。それにより、「金融=怖い」「金融=悪」という印象を持ってしまう。つまり「騙されてしまった」ということである。

本書ではグリム童話を基に(というかパロディといった報がふさわしいと思うのだが)金融にまつわることについて書かれた一冊である。

グリム童話は私も小さい頃に絵本で読むことが多かったが、私が高校の時に絵本に書かれている話は嘘だということを知った。本来のグリム童話は子供には決してみせられないほど、グロテスクなものである。殺人など当たり前のようにあり、しかも猟奇的な内容のものは少なくない(代表的なものでは「白雪姫」がある)。

第1話「ヘッテルとフエーテル」
本書の中心人物のヘッテルとフエーテル兄弟の話である。主に金融商品の情報のことについてであるが、なんといっても本書は本章に限らず、本文に限らず、脚注にも笑いのエッセンスが散りばめられているところにある。

第2話「カネヘルンの笛吹き」
ここでは金融というよりも女性のあり方に視点が置かれている。なんか香山リカが勝間和代を(影で)批判しているような感じのような気がした。

第3話「ピノキオ銀行」
本書は章立てのタイトルの下に名言(迷言?)らしきものがあるが、本章ほど大爆笑したところはなかった。私でもこれから使いたいくらいである。
さて本章の中身に入っていこう。
ピノキオというと「嘘をつくと鼻が伸びる」というのが有名であるが、この「嘘をつくと〜」という部分を本章では生かしている。さて何を生かしているのだろうかはここでは割愛する。

第4話「アホズキンちゃん」
最近では「将来の不安」といわれて久しい。将来を思って国家にお金を預けるということがある。しかし現在の国家は将来を保証してくれるのかというと、間違いなく「そうではない」と言いきれてしまうほどにある。本章はその現状について風刺劇(?)という形で書いている。

第5話「ヤンデレラ」
これは解説するまでもないがある会社のことをパロディにしている。実際ある会社によってだまされた人は数知れずで、著名人の方もだまされていたと言われるものであったという。

第6話「ヘッテルと7人のODA・NPO」
日本は発展途上国の国家に出資を行うODA(政府開発援助)というのがあり、約93億ドル(2008年現在:出資純額ベース、総額ベースでは約170億ドル)の出資している。また民間単位ではNPOやNGO単位で募金などを通じた事前活動を行っている。本章ではその現状について書かれているが、本章でふと思い出したエピソードがある。1984年にイギリスとアイルランドのロック界のオールスターが集まりエチオピアで起こった飢餓を受け、「バンド・エイド」が結成された。その時につくられた曲「Do They Know It’s Christmas?(ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス)」が大ヒットし、翌年のライヴエイドにまで発展した。その資金で支援物資や資金をアフリカに提供したのだが、それらの国々の政治腐敗は凄まじく、政治利用に使われ、物資や資金はことごとく着服され、結局飢餓にあえいでいる人たちに届かなかったという。

第7話「王様の金はロバの金」
ここでは国などによる情報によって損をした話である。国に限らず民間でも、このような話は少なからずあり、何も知らない私たちは、誰でも儲かるという「甘美な毒牙」に捕らえられてしまう。「儲かる話ほど危険な話はない」、「情報は疑ってかかれ」というのを肝に銘じておくべきである。

第8話「裸のフエーテル様」
「格差」による問題が顕著になった2004・2005年に「貧困ビジネス」が増加し、貧困層を食い物にしている。なんといっても、あしらい方がとてつもなく下劣というほか無い。本章では金融のことを指しているのだが、ほかにもアパートを格安の家賃で貸すというようなビジネスもある。もっと詳しい話はジャーナリストの須田健一郎氏が書かれた「下流喰い」が詳しい。

実をいうと、本書を紹介するときに細心の注意を払ったのが本書の内容をあまり出さないことである。そうでもないと爆笑・痛快である本書の魅力が半減しかねない為であるため本書を紹介するに当たり、最大限言葉に気を使った。本書は買ってみないとわからないほどである。
実をいうと、本書を紹介するときに細心の注意を払ったのが本書の内容をあまり出さないことである。そうでもないと爆笑・痛快である本書の魅力が半減しかねない為であるため本書を紹介するに当たり、最大限言葉に気を使った。本書は買ってみないとわからないほどと言った方がいい。
本書ほどまさに「爆笑」と「痛快」を併せ持った一冊はない。私はそう思う。