教え上手

サンマーク出版 小野様より献本御礼。
学習にしても、仕事にしても「教える」ことは必ずある。人から教えを請われた時、あなたはどのように教えるのだろうか。私はまだ社会人になってそれほど日は経っていないのだが、仕事を覚え、こなしながらも、後輩への指導もしなくてはいけないポジションにいる。「教える」ことにもまだ手探りで、様々なことを試行錯誤繰り返している状態である。

ちなみに本書は「学習」における教え上手であるが、仕事の場においてもどのように「教える」のかというエッセンスが詰まっている。

第1章「誘導し、ふくらませる技術」
皆さんはどのようにして「教える」だろうか。想像できるものとして、一から十まですべて言ったり、黒板に書いたり、実際にやらせたりして身につけさせるということがよくあるものだろう。
しかし、本当に教えることの上手な人は「どこまで教えるのか」の伏線を考えながら教え、後は調べたり考えたりさせるとのこと。
確かにすべて教えてしまってはせっかく「覚えて」いても、思考パターンが一つしかないため、結局は「思考停止」に陥りやすい。
しかし、教える量を減らすことにより、生徒自身が勉強をして、自ら身につけられる要素が多くなる。自分で調べたり、考えるなど、紆余曲折を経て覚えたものは印象が強く、忘れにくい。かつ端の知識も得ることができるため一石二鳥といえる。
教えることはすべて覚えさせるのではなく、「考えさせる」「調べさせる」癖を付けさせることにある。

第2章「考えさせ、追究させる技術」
一般論として「無知」は「悪」という考え方が蔓延っている。しかし私はそうは思わない。むしろ「悪」なのは「誤謬」、簡単に言うと「知ったかぶり」である。本章ではこの知ったかぶりの壁を壊し、「本当の知識」をつけさせる、調べたり、考えさせたりするなど「追究」をする癖を足や目を使って身につけさせることを提唱している。「知ったかぶり」の壁を壊すと考えると、何かソクラテスの「エイロネイア(皮肉)」に似ているような気がする。

第3章「引き込み、注目させる技術」
考えることも、調べることにもまず起爆剤となるもの、本章では「?」にさせる材料を見つけるところにある。その材料はまわりくどく、一見「無駄」の様に思いがちだが、「塵も積もれば山となる」ということわざにちなんで、「塵も積もれば「宝」の山となる」。つまり無駄と思われるものも、自分の調べた技術であるため、大きな糧につながる。

第4章「モチベーションを高め、才能を伸ばす技術」
勉強をやるにも、仕事をやるにも「モチベーション」は必要である。相手のモチベーションを高めるためには、相手の良いところを見つけ「ほめる」ことで相手の自尊心を高めながらも、モチベーションを高めさせ、次につなげられるという。

これまで「一」から「十」まですべて教えていくという考えが改まる内容だった。「教え惜しみ」ながらも相手が考える、もしくは調べるようになる原動力を作らせ、相手をほめることによって、さらなる学びに繋げられる。そしていつの間にか勉強や仕事が好きになり、気づかぬうちに成長を遂げる。本書は革新的な教え方、というよりも調べさせたり、考えさせる「教え方」、本来あった「教え方」ここにありというような一冊である。