シンプル族の反乱

みなさんは「シンプル族」についてどのような人を連想するのだろうか。

・地味でシンプルな衣装しか着ない。
・食事も簡単なもので済ます。
・家賃の安い所で住んでいる。

と思ってしまう。

しかし「シンプル族」、そしてそれを誕生させた要因は高度経済成長期以降からあった「モノの裕福」から「心の裕福」に願望のベクトルに変わったことにある。また「失われた十年」のまっただ中で親の背中をみて成長していただけに「貯金」を行うなどの「堅実路線」に走り、モノをあまり消費せず、手仕事に重んじ、冷凍食品に依存しない基本的な生活をする。端から見たら至って「シンプル」といわれるような生活をする人たちのことを言っている。本書はシンプル族たちがどのような生活、価値観をもっており、経済に影響を与えるのかというのを考察している。

第1章「シンプル族とは何か?」
本章では購買に関する統計が多い。というのは「シンプル族」はあまり物欲がなく、豪勢なものを「欲しがらない」ためである。その影響からか、若者の「自動車離れ」が進んでおり、国内自動車販売台数も軒並み減少している。但し車全体で見たものであり、エコや手軽さを意識してか軽自動車のシェアが伸びている(但し販売台数が伸びているかどうかは分からない)。
さらに衣服もそれほど高いもの、贅沢なものを好まない傾向にあり、百貨店業界も苦戦を強いられている。とりわけ無印やユニクロの台頭がそれを後押ししていると言っても過言ではない。
シンプル族の傾向を見ていく中で面白いものを見つけたと言えば「神秘性」、例えば占いやスピリチュアルに関心が強い所にある。巷では占い本もあればすでに放送が終了した「オーラの泉」の影響も挙げられる。

第2章「シンプル族の価値観とライフスタイル」
シンプル族の価値観とライフスタイルを一言で言うと「合理的でこだわりのある」と本章を見て思う。
シンプルであるため、エコでありながら、無駄・華美を嫌う。レトロ・ナチュラルなものを好むが、その中でもシンプルでありながら高級なもの、例えば伝統工芸で作られた家具や食器には強く惹かれる。
そしてお金や物事に執着をせず、様々な人と出会いたいと思い、インターネットやTV、雑誌では手に入ることのできない「生」の情報を手に入れたいと考えているという。「金持ち」よりも「「人」持ち」でありたいと思うのもシンプル族の特長である。
そう考えると私は前者はそうではないのだが、後者はその通りかもしれない。「半シンプル族」と言えるかもしれない。

第3章「シンプル族の衣食住遊」
ここからはシンプル族の「各論」に入っていく。本性の他とるにあるとおり「衣食住遊」の順に見ていこう。

「衣」
最初にも書いたのだが無印やユニクロを好む傾向にある。いま、後退している経済状況の中だからでこそ、シンプルで手頃な価格であるブランドが好まれるのかもしれない。

「食」
簡素とはいえど冷凍食品やコンビニ弁当に走ることはない。むしろ自然食品の打っている店に行く傾向にある。

「住」
家賃の安いアパート、マンションに行くよりも、むしろ築数十年になる古い一軒家を好むという。
さらに古い家具や自然を意識した家具、そして何よりも家族やコミュニティを重視した住まいを好んでいるという。シンプル族は新しさと古さを共存させていく人たちなのだろうか。

「遊」
シンプル族はテレビも見ず、インドア派である。その一方で世界遺産や秘境といった所に行ってみたい問う願望がある。また旅行以外にもやってみたいものでは「農業」というものもある。これは昨年、一昨年で農業がブームの兆候を見せていた。現在は時期も時期か鳴りを潜めているが、春になったときからまた騒ぐのかもしれない。

「シンプル族」は合理的で質素な生活をしているのかと思いきや「自然」や「コミュニティ」といった新しくもあり、今悩みの種となっているもの、コミュニティの欠如や志向の多様化から脱却できるヒントが眠っているのかもしれない。そしてシンプル族は「モノ志向」であった時代からどの方向へ向かっているのかを示す道標にもなっているように本書を読んで思った。