自由と平等の昭和史 一九三〇年代の日本政治

1930年代は、1929年に起こった世界大恐慌の後、その年代に代表されるのは「二・二六事件」「日中戦争(支那事変)」が挙げられる。1930年代から、日本軍(特に陸軍)の発言力が増し、軍人の閣僚・首相が誕生してきたのもその時代である。大きなターニングポイントを迎えた。本書はそれを迎えた経緯と「反ファシズム」といったいわゆる「左翼系」「ソ連系」とも言われる人たちの歴史をたどる。大恐慌をむかえて労働状況の変化により小林多喜二の「蟹工船」のようなプロレタリア文学も萌芽した時期とも言える。

第一章「反ファッショか格差是正か」
本書は1930年代のことについてであるが、20年代では「軍需景気」と呼ばれるほど日本の経済は潤っていた。しかしその中で「格差問題」というのが表面化しており、「蟹工船」の作品が出てくるほどであったという。その時代のなかで「プロレタリア文学」は取り締まりの対象に合い、特高が動き出すほどでもあった。ちなみに小林多喜二はこの特高につかまり、拷問の末死んだ(虐殺死)。
本章では社会大衆党の2人が反ファシズムと格差是正のせめぎ合いのことについて書かれている。元々は上記のように軍部とは対立の傾向にあったのだが、やがて進軍路線となり、軍部や官僚に接近していった。

第二章「民政党の二つの民主主義」
現在は言うまでもなく「民主主義」であったのだが、戦前も同じように「民主主義」であった。数多くの政党が結成され、衆議院選挙では鎬を削った。当時は衆議院・貴族院と2つあったのだが、貴族院は推薦により構成されていたため、選挙によって選ばれるのは衆議院のみだった。
本章では民政党と書かれているが、正式には「立憲民政党」という政党で、昭和初期に憲政党と政友本党が合併してできた党である。どちらかと言うと議会中心主義であることから軍部への批判や圧力があった。本章ではその党にいた斎藤隆夫と永井柳太郎の2人についてである。

第三章「「革命」と「転向者」たちの昭和」
戦前から現在まで続いている政党が一つだけ存在する。そう、「日本共産党」である。本章は戦前の日本共産党について書かれているが、その時は特高による弾圧・抑圧にかけられた。そのせいか特高による検挙数が30年代前半に激減し、共産党などの活動も公にできなくなってしまった。秘密裏に活動を続け、戦後復活をした。

1930年代は様々な場面でターニングポイントを迎えたと言っても過言ではない。本書はそう言った時代のなかの政治はどのようなものだったのかについてピックアップした一冊であった。