性とスーツ―現代衣服が形づくられるまで

もうすでに社会人にとって「あたりまえ」となっているスーツであるが、私自身スーツを着ることに関していくつか疑問がある。

・スーツはいつ頃に生まれたのか。
・スーツが仕事着として浸透したのはどのような経緯があったのか。
・本来スーツは何のためにあるのだろうか。

それらを解決するためにまず手をつけたのは本書である。本書はスーツが今の形になった経緯と考察を行っている。男性・女性ともに「スーツ」をまとうようになったのだが、それをファッションの観点からみている。

第一章「はじめに」
最初にも書いたように本書はファッションの観点から考察をしたものである。スーツの歴史については別の本で紹介されると思うが簡単にはイギリスで19世紀に軍服のラフに着こなしたことから始まっている。日本に伝播されたのはそれから間もない時、幕末だったころを考えると、歴史はそれほど長くない。

第二章「ファッションの作用」
元々「ファッション」とは何の意味があるのだろうか。自分の身なりを良くするためというものもあるが、元々は「自己表現」をするというところからでてきているかもしれない。それが主張だとしたら社会体制への批判、もしくは抵抗というのも一種のものであり、本章にも書かれていたジャンヌ・ダルクの話についても合致する。
ではスーツは「ファッション」なのかという考えに入る。それが誕生した19世紀頃では確実に「異端」と見られていたから「ファッション」としても成り立つだろう。しかし社会人のほとんどが着るようになった今では「ファッション」のにべにもならない、いわゆる社会人の「普段着」に成り下がっている。「きちんとした普段着」というのかもしれないが、それだったらふつうの私服を良くすればいいだけで、「スーツ」は相手に対してという意味合いでしかない。相手の空気を呼んで自分もそれを着るというあたかも中国の人民服や軍服にも似ているような気がする。

第三章「スーツの誕生」
何度か言ったがスーツが誕生したのは19世紀に、軍服から変化をしてできたと言われている。「スーツ」が「戦闘着」と考えている人であればそれがルーツになっているのかもしれない。19世紀に誕生したと言われているが、スーツができるようになりだしたのは17世紀、様々な服が「モダン化先行した。」に伴い変化をしたことからである。「モダン」については次章にて詳しく説明されている。

第四章「モダニティ」
「モダン(modern)」を日本語に直訳すると「近代的」や「現代的」と表わす。
19世紀におけるスーツの誕生から20世紀初頭にかけては「モダン」というのが先行した時期である。
今でも同じであるが、流行に乗ろうとする考えは今も昔も変わらない。

第五章「現代」
現在における「流行」に乗るパターンは目まぐるしく変わっていくわけであるが、それ以上にスーツのファッションが衰え始め、代わりにジーパンとTシャツなどカジュアルというよりも「ラフ」なスタイルが「ファッション」としてピックアップされている。

ファッションの変遷としての「スーツ」を見ることができたが、本書の著者は美術史学者である事を考えると、美術的な観点からスーツの歴史を見ることができる意味では斬新さがある。