透明人間の作り方

「透明人間」というとSFや架空の作品でよく出てくる人物(物体?)の話とイメージしている。科学がいくら進化を遂げていたとしても所詮は「おとぎ話」だと思っていた。しかし本書は本当に透明人間がつくれる時代が到来するという。その一つとして「メタマテリアル」という新材料があるのだという。それは「ナノ(基礎となる単位の「10の-9乗」倍)」単位ほどの微細なものである。本書はこれから話題となる「メタマテリアル」の魅力、透明化技術の発展について空想といわれた科学が現実になる瞬間に割目をした一冊である。

1章「「透明人間」になりたい」
もしも本当に「透明人間」になるとしたら、あなたはなにをしたいのか。
私が透明人間になったら、いったん犬の動物に近づいてみる。人間では気づかないが、犬などの動物は気づくので反応を見たくなる。
「透明人間」を取り上げた作品は今も昔も多数残っている。最古のものではギリシャの「ギュゲスの指輪」が挙げられている。簡単にいえばその指輪をはめることができたら透明人間になれるという話である(しかし、その指輪自体は透明になれるのかという邪推もある)。

2章「生物世界は「透明人間」だらけ」
ちょっと疑わしい章題である。しかし実際に透明になる(?)技術を持っている。その代表としてカメレオンやタコが挙げられる。しかし「完全に透明になる」わけではない。どちらも共通して言えるのが「変色」をする事、海や陸の中で「保護色」に変色することによってあたかも透明であるようにするという。

3章「夢ではない「透明人間」の科学」
いよいよ「メタマテリアル」の話に入る。直訳をすると「超・物質」といわれるが、この物質が生み出すものとして「光の屈折」によるもの、見方や見る方向によって透明になれるのだという。ほかにも4年前に「サイエンス」誌において発表された論文から考察を行っている。

4章「「タイムマシン」と「テレポーテーション」の科学」
「空想科学」といわれているのはほかにも存在しており、本章では「タイムマシン」と「テレポーテーション」を挙げている。
「タイムマシン」が現実にでる可能性はきわめて低いものの、物理学の論文として「タイムマシン」のことについて考察を行い、発表をした人はいるという。キーワードとして「ブラックホール」と「ホワイトホール」がある。
さらに「テレポーテーション」も力学や素粒子から可能であるとしている。これもまた実用化されるのは何十年も、何百年も先になる話であるが、これらの研究が現実に行われているだけでも魅力的と言える。

5章「「透明化」技術の現状と今後」
軍事に関して少しかじった人はわかるかもしれないが、「ステルス技術」というのはご存じだろうか。簡単にいえばレーダー(電波)に反応されないようにしたものをいっているものである。他にも戦闘服として迷彩といった「カモフラージュ」もある。これは第2章に挙げられたカメレオンやタコをヒントにしたものもある。

「透明化」がもはや空想にある夢物語ではなくなった。すでに軍事技術として「透明化」にまつわる技術が取り上げられており、近いうちにはどの方向からも完全に見えなくなる「完全透明化」というのもできるのかもしれない。
本書を読んで、科学の進歩はここまできたのかと驚きを隠せなかった。