田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる!アタマがよくなる勉強会

本書は茂木健一郎氏の作品のように思えるが、「朝まで生テレビ!」でおなじみのジャーナリスト、田原総一朗氏の対談形式にて勉強、記憶力、討論に至るまで幅広く議論されている。

レクチャー01「脳ブームは現代を勝ち抜くための革命原理である」
東北大学の川島隆太教授が先陣を切り「脳が良くなるトレーニング」シリーズが発売され、爆発的なブームを呼んだ。「脳ブーム」の走りはおそらくそこからきているのかもしれない。とはいえ「脳ブーム」となる前から仕事においてもプライベートにおいても「効率化」といったものが起こっていることから、「脳をいかに効率化するか」というところで必然的にブームとなったという見方もできる。
少し変な話になるが脳が良くなるからといって「脳トレ」を1回やっただけでは効果がない。同じトレーニング、違うトレーニングを交互に継続することによって初めて効果が期待できる。しかし人間は怠けたい動物であることを考えると「14歳から」とか「サルでもわかる〜」といった安易な本に行きがちになる。そしてそのことによって「わかったつもり」といった誤謬の認識が生まれてしまう。
「脳トレ」は想像以上にきつく、それを行うことによって「ドーパミン」という脳を活性化する物質を発生させる。それが「勉強する」のみならず「質問をする」など度胸のいるもの、さらには独自の勉強法や記録法を編み出すなど方法は様々である。

レクチャー02「「頭がいい」「悪い」とは、どういうことか」
「頭のいい人」「頭の悪い人」の定義は人それぞれである。「勉強のできる人」「情報処理能力が速い人」「論理的な人」と様々である。しかし私の定義する「頭のいい人」はちょっとずれているかもしれない。私にとって「頭のいい人」は「バカを装える人」である。理由は簡単である。自分が考えるのにも限界はある。当然限界を超えなくてはトレーニングならないが、それ以上に他人の思考を利用することも一つの手段である。そのことによって教えてもらえるばかりではなく、思考のクセを学ぶことができ、結果的に思考の幅が広がるという。それに知的に利口ぶる人よりも、バカである方が相手にとって教えがいもあるし、なんと言っても他人が助けてくれる。他人との距離も近くなるだけではなく、思考の幅も広がることを考えると一石二鳥になるからである。
本書では「頭のいい」定義は「文脈力」にあるという。今となってはブログやtwitterなど自分から情報を発信できるメディアを持つことができ、そこで文章を読んだり書いたりする機会が飛躍的に増えた。その中で文章の中にある時代や心情、本音などを見抜くことができる、文脈力、もとい「行間を読む力」というのが重要になってくると言う。

レクチャー03「よりよい人生のためには、ドーパミンがもっと必要だ」
ドーパミンを出す方法は様々であるが、簡単なもの、そのほかにも囲碁や将棋、麻雀などでは格下の相手と戦っても勉強になるものがあっても少ない。それ以前にドーパミンが出なくなる。
その一方で新たな発見やひらめきを得ることによってドーパミンが出ることがある。これは著者自身の幼少時代の体験談も例示している。

レクチャー04「脳にいい鍛え方、脳が若くなる秘訣」
ここでは「記憶力」の鍛え方について取り上げられている。最近ではパソコンの普及により物忘れの激しい若者が多いと言われているが、自分で覚えることなく外部、つまりパソコンや辞書に頼ることができるので自分で記憶する必要が無くなる。そして記憶することは必要でなくなるから、どんどん退化する。それはまるで人類の進化のようにそれの代償として退化するものがあるかように。
記憶力を取り戻すためにはどうしたらいいのか、簡単に言うと自ら反復練習をしたり、自らの頭で情報を処理する訓練をすることであるという。確か「プロフェッショナル 仕事の流儀」で噺家の十代目柳家小三治が取り上げられた際、小三治が茂木氏に自ら覚えた噺を忘れてしまっている、それを呼び起こすにはどうしたらいいのかと問うたことを思い出す。確かその場でも本章と同じことを言っていたと思う。

レクチャー05「遊ぶように仕事せよ――脳を最大限に活用する方法」
「仕事はゲームである」「仕事は本来楽しいものである」というとそれに対して激しく抵抗をする人が多い。しかし、その人に対して「これだけ続けられたのはなぜ?」と訊き返したくなる。
もっともすべてにおいて「意味」を見いだしながら仕事をすることほど意味のないものはない。私は商業高校のみでありながら大学進学のために受験勉強をした身であるが、
商業高校では体験できない発見もこの受験勉強の中で体験することができた。また一昨年から勉強会に参加し続けているが人と接したり、勉強をしたりする事が楽しいから、さらに書評も文章を書くことが楽しいからと列挙することができる。すべては「遊び」から「楽しみ」からきている。

レクチャー06「脳を刺激し、新しい発想を生む対話の力」
ここでは「対話のすすめ」といったところである。アイデアはひょんな所から出てくるわけであるが、それは対話をすることによって関連性を見いだすことの他に、議論をのさらなる深化、相手との距離を短縮させるなど様々な効果がある。コミュニケーション論で有名な齋藤孝氏も保母同じく、対話の重要性を説いていたと思う

レクチャー07「「聞く技術」よりも「さえぎる技術」」
「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」を視聴した方であればわかる人もいるのではないかと思う。田原総一朗は議論を遮ることで有名である。なぜか茂木氏はその遮り方に感動したという。「人の思考は十人十色」というのをつくづく思ってしまった。

レクチャー08「不確実な時代には、IQより感情の豊かさが必要だ」
茂木氏が脳科学者を選んだのも直感、かく言う私もSEや書評家を選び、志した理由も直感だった。裏付けの論理はもちろん必要であるが、それは後付けでもかまわない。

レクチャー09「脳を最大限に活用して、人生を自由に生きよう!」
脳を最大限に生かす技術、それは日本独特の人間関係力、とアメリカなど欧州で育まれた論理力にある。これらを本章では「ウェット」「ドライ」と使い分けている。

本書のタイトルは「アタマが良くなる勉強会」である。しかし勉強会とは言っても主催者の田原氏と講師の茂木氏だけの10時間にも及ぶ対話形式の「勉強会」と言うべきかもしれない。2人だけでぽつんとしていながら、中身は幅広く、深く議論しており、そうとう濃い内容のように思えた。