ラクして成果が上がる理系的仕事術

「一生モノの勉強法」がベストセラーとなった京大大学院教授である鎌田氏であるが、元々理系に関する本も出しており、本書が鎌田氏におけるビジネス書のはしりの一つと言える。一昔前までは「理系」というと変人やオタクの集まりと言われ、忌み嫌われる存在であったのだが、ビジネスにおいて論理などが問われ始めてから「理系アタマ」の重要性が認知され始めた。その一方で大学の理系出願数が全体の受験数以上に現象の幅が大きい。理由は簡単で数学など理数系が苦手という高校生が増加していったこと、理系に関して興味を示さない人が増加していったことにある。
本書は理系の中でもアウトプットを中心とした情報収集、情報整理、アウトプットの手法を余すところなく紹介をしている。

第Ⅰ部「アタマも周りもまずは一新!――理系的システムの整備と情報の収集」
まずはインプットである。知的生産を行う手法は型にはめたものばかりではなく、さらに完璧な事を目指すべきではないという。インプットの手法は人それぞれ違う。私の場合のインプット・アウトプット方の中で一番共感を得たのが「タイム・シェアリング」にある。ほぼ毎日の様にほんの書評を行うのだが、2・3冊同時に書評をする事が多い。私の本職であるSEの用語として「パイプライン法」というのがあり、複数の処理を、時間をずらしながら同時に行うというコンピュータの処理方法がある。それに習って人間の脳も同じようにできるのではないかと思い、仕事においても勉強にいても、プライベートにおいてもその方法を採用している。

第Ⅱ部「とことんアイデアを練る!――クリエイティブな情報整理と発想法」
どちらかというとインプットとアウトプットの狭間にある「ミドルプット」と言うのがあるが、ここではそれに当たるのだろう。
情報を得たところで今度はどのように整理をしたり、情報を元に新しい物を生み出す「発想」を行っていくかと言うことについて書かれている。
自ら得た情報を種別化していくために記号で管理し、自らペンを動かしながら新たな考えを図式化していく。
ここまでは結構あるのだが、「コピー&ペースト」のすすめは先進的と私は考える。読くレポートを書くことでしてはいけないこと、レポートを見る教授がやってほしくないことの筆頭に挙げられるのが「コピー&ペースト」であるという。自ら考えたことを文章にしてほしいという思いからかもしれないが、情報量の違いに天と地の差があるだけにその方法を採らざるを得ない学生の内情もわからなくはない。
とはいえただ単に「コピー&ペースト」を進めているのではなく、自ら得た情報を並べていくことが大事としている。発想も同じ事がいえるかもしれない。既存の物と物の組み合わせを変えることによって新しい物が生まれるのである。

第Ⅲ部「いよいよ書き出す!――理系的なアウトプットの実行と将来への準備」
いよいよアウトプットである。まず紹介されている「三脚法」であるがこれは一つの事柄を「3つ」に分けて構成する方法であるが、本書がまさにその体を成している。全体が3部構成であり、1部が3章で成り立っている。ほかにも書き出し・書き方の極意や推敲、タイトル決めについて書かれている。
前半から中盤までは仕事術と言った感じであったが、後半はアウトプットとしての本の「書

き方」を列挙している。しかし仕事においても報告書をつくるなど、文章を書く機会は多い。本書はいかに簡単に、そして多くのアウトプットを引き出していけばよいのかに焦点を当てた一冊といえる。