詩集 夕暮

普通、「詩集」というと自らの思いや感じたことをそのまま散文的な文章を「オリジナル」で書かれている。そこから作られた文章は論理や理屈といった世界から解き放たれながらも一文一文に、力や思い、情景や趣などが込められており、自ら言葉という名の不思議な世界に溶け込んでいくかのような錯覚を覚える。

しかし本作はそれとはかなり異なっている。簡単に言うと昔の軍歌や流行歌、小説の内容をアレンジしながら詩を作っているのである。もちろんテーマである「夕暮」に沿って、である。

「昔の軍歌や流行歌、小説の内容をアレンジした」というだけあって、一昔前ののどかな夕暮が本書の詩を読んでいくうちに見えてくるような気がした。
子供の頃は家でゲームが大概だった。それでも友達と虫取りをしたり野球やサッカーをして遊ぶこともあった。むしろ子供の頃スポーツをしていた頃を考えると土曜日の午前中が多かった。そのときは体育館が開放され、バレーボールやバスケットボールをやったことを今でも覚えているほどである。

ともあれ遊ぶのがだいたい終わるのは夕暮時であり、夕焼けとともに家に帰る。
今と子供の頃、そして詩に出てくる戦前の夕焼けはどのように違うのかと言うと、建物の点で変化があるといえば変化はあるが、空は今も昔も変わりなく、黄昏色になり夜を迎える。それは時代が変わっても、状況が変わっても、風景が変わっても、変わらないものである。