世界を変えた、ちょっと難しい20の哲学

最近、ニーチェやゲーテの言葉に関する本が社会現象になっている。「名言集」に近いものであるが、哲学書をより読者寄りにという傾向にある。ベストセラーとなった「ニーチェの言葉」の書評でも書いたのだが、それらの本はあくまで本来ある哲学書の入り口に当たるポジションにあるべきだと考える。印象に残る言葉からはじまり、そこからニーチェやゲーテの名作を味わうことが大切だと思う。本書は、ソクラテスからサルトルまで古代から現代に至るまで18人と2学派、計20の哲学を取り上げた一冊である。

Ⅰ.「古代哲学 哲学のはじまり」
「万物は水である」と提唱したタレスから哲学は始まった。そしてソクラテスがでてきており、本書の最初に紹介されるプラトンがでてくる。
ソクラテスは本書では紹介されていないが、プラトンが「ソクラテスの弁明」を出しているだけに、本章で紹介されている四本柱にはいないのだが、影響している。
ほかにも形需上学などで有名なアリストテレス、論理を中心としたストア学派、感覚を中心としたエピクロス学派について取り上げられている。

Ⅱ.「古典時代の哲学 新しい哲学の到来」
古代の哲学は人間にまつわる機能、そして自然にまつわることを中心にしていた。しかしデカルトが提唱した哲学はそれとは全く異なるものだった。本章以降はこのデカルトを機軸にして、それを批判する哲学がでてくる。
その代表格が「エチカ」で有名なスピノザである。デカルトでは思考など様々なことを分離して二元論にしていたが、スピノザは数学の定理を証明するかの如く、幾何学的に一元論にして提唱している。「エチカ」は読んだことはあるのだが、まるで数学の定理集を見ているかのようだったことを覚えている。
そしてもう一人は「第三極」にあたる、つまりデカルトにも、スピノザにも属さない哲学を提唱したライプニッツは「神の完全性」から哲学は出発している。思考や論理というよりも宗教性が強いように思える。

Ⅲ.「現代哲学 哲学の完成、そして新しい道」
自然から思考の対立関係へと進化し、そしてヘーゲルでは弁証法により、それまで対立しながら提唱していた哲学を作り直し、精神や社会に至るまで哲学化していった。
マルクスでは唯物論について、ニーチェは破壊について、
ベルクソンは道徳について、ハイデッガーは存在について哲学的に考察を行っている。哲学は方法、思想に至るまで多岐にわたっている。

哲学の歴史概説という位置づけの一冊であったように思える。各々の哲学について深く入り込まず、しかし有名な言葉しか取り上げないことは無かった。これまでの哲学を批判しながらも、新しい哲学について論じていたためか、哲学そのものが一本の筋道のように見えた一冊であった。