成果を生む人が実行している朝9時前のルール

まず断りを言っておかなければならないのだが、本書は「早起き」を薦める本ではない。「朝9時まで〜」というタイトルがある以上、早起きではないのは明白であるが…。

では本書はどのような本なのか。簡単に言うと「セルフブランディング」である。会社に依存せず、自らしか持つことのできない「スキル」「ノウハウ」「タグ」を持つためにはどうしたら良いのかについて書かれている。

Part1「「朝9時前」にやるべきことを変えよ」
自己投資のための活動をやるとした場合、時間はいつにやるのだろうか。おそらく多くは就業時間後、もしくは土日の休日を連想するだろう。その時間帯であればセミナーや勉強会も数多くある。しかしその時間帯にはある種のリスクがある。たとえば、就業時間後は突発的な残業や飲み会により時間が奪われる可能性があり、かつ仕事帰りであるため「疲れ」もある。そして土日であるが、仕事の束縛から解放されるから大丈夫かと思いきやご用心。就業の縛りがないからでこそ、だらけやすくなってしまう。
そこで本書で着目をしたのが「就業時間前」。実はこの「就業時間前」はいいとこ取りといえる。

・朝であるため、「疲れ」は意識しなくていい。
・朝であるため、脳も活発に動く。
・就業時間前であるため、これから会社に行く緊張感がある。

その時間の中で仕事以外のことをいかに行うことができるのかが、ブランディングをする上で大きな鍵となる。また朝に行われる勉強会も多いが、これはPart5にて説明する。

Part2「市場に流通していない情報を集める」
昨今ではインターネットの普及により、情報は濁流のような速さと多さで伝わってくる。一昔前では全くと言ってもいいほど想像できないほどである。
インターネットの普及により、情報は手軽に手に入るので人と会う必要がないのでは、と思ってしまう。
しかしこれは全くの逆で、人と会うことこそ最大の情報収集といえる。チャンスもビジネスのアイデアも、そして情報もすべて「人」とともにやってくるのである。インターネットでは手に入らない、生きた情報、そしてその業界を熟知しているからでこそ、業界における情報のフィルターをとおして良質な情報を手に入れることができる。
「出逢い」にはいい所だらけであるが、もちろん自分が相手にとって有益な情報などを提供する「ギブ」も大切となる。

Part3「サラリーマンでもできるセルフブランディング」
「明日会社がなくなった時、あなたは自分の二本の足で立っていられるか」
バブル景気の頃までは「終身雇用」で社会人生活は安泰とされていたが、そこからは大量リストラや倒産など、明日になると突然会社が倒産していると言うことも現実に起こっている。
そのため、会社に左右されない自分だけの「ポータブルスキル」というのが大事になる。たとえば「ノート術」や「思考術」を独自で磨いた人であれば、転職してもその技術を使うことができる。
特別な技術はなくても、たとえば交流会や勉強会、または仕事の場においての取引先と言った「人脈」もそういったポータブルスキルの一つである。
ちなみに私は…というと、まず仕事で鍛えたシステム設計やプログラムの技術、プライベートで気づき挙げた書評、そして人脈、読書などが挙げられる。

Part4「情報は1枚の名刺にまとめなさい」
セルフブランディングとしてあげられるものとして「個人名刺」がある。本章では数多くの個人名刺が挙げられているが、なんと私のも取り上げられている。
今回は私が名刺を作った経緯について説明する。
社会人になって間もないときに配属で川崎に移り住むことになったのは有名な話である。配属されてから1ヶ月したときに勉強会に初めて参加した。中島孝志氏の速読教室であった。そのときに「名刺交換会」があることを知った私だが、会社の名刺は職業上渡すことができない。個人名刺を作ろうと言うことで近くの印刷屋で名刺を作った。会社名や所属名も含めた名刺で、かなりシンプルなものだった。
それから4ヶ月後、千葉智之さんの主催する「出逢いの大学 特別講座 vol.1」に参加したとき、ある方から名刺の重要性を教えてもらった(むしろ叱られたと言う方が正しいかもしれない)。このときに著者の美崎氏に初めてお会いし、名刺交換を行った。そのときは早稲田のclip研究会の名刺だったことを今でも覚えている(と言うよりも持っている)。
それから自分の名刺をどうするか葛藤の日々が始まった。自分の写真ももっておらず、ましてやどのように名刺を作ったらいいのかわからなかった。過去にもらった名刺も見返してどのようなものが必要なのかも挙げてみた。
プロフィールや趣味などは埋まったが、肝心の写真や絵はどうしようか迷った。しかし名刺のオーダーメイドができるサイトにたまたまあったのが、本書にあるとおりトラックの絵である。「蔵前トラックⅡ」だから破れかぶれで載せたのだが、意外にもこれが会話のとっかかりにもなった。今となっては「私のブログ」と「トラック」共々私のカラーになっているのかもしれない。

Part5「ナマの情報と人脈を集める朝食会活用法」
ブランディングの準備を行ったら、次は実践編である。著者は夜に行われる「ひみつの学校」のほかに、大人気の「築地朝食会」や「あさべん」を主宰している。ほかにも朝開催されるものと言えば「読書朝食会Reading-Lab」「早ね早おき朝ごはん」など多岐にわたる。
平日の朝に行われる朝食会では出勤前であり、時間制限もあるため、限られた時間の中で参加者との出逢い、質問を行えるかによって人脈構築も違ってくる。

朝の時間帯は「ブルーオーシャン」に近いような気がする。平日の夜や休日と違い、勉強会などセミナーを行っている所も少なければ、「限られた時間」を生かすことを考える人は少ないように思える。本書はブランディングではあるが早起きせず、出勤前の時間帯をいかにして活用するか、それを示している。