電子書籍の基本からカラクリまでわかる本

洋泉社 依田様より献本御礼。
昨月28日に日本でiPadが発売された。今年の秋冬頃には、kindleやsonyリーダーが発売される。「電子書籍」の隆盛が現実味を帯びてきた。本書はこれから到来する「電子書籍」の時代についてどのように変わっていくのか、そしてすでに「電子書籍」の時代が始まっているアメリカではどのようなことが起こっているのかについて迫った一冊である。

PART1「出版に変革をもたらすiPad&キンドル」
この章に入る前、書評ブロガーのカリスマである小飼弾氏と上武大学教授の池田信夫氏の対談が掲載されている。小飼氏はすでに著作のいくつかを電子書籍化しており、池田氏は自ら電子書籍会社である「アゴラブックス」を設立した。電子書籍に大きく関心を寄せているだけに暑い対談となった(ちなみにこの対談は巻頭と巻末に記載されている)。
さて本章に移るのだが、すでに日本で出回り始めているiPadは書籍を読むのみならず、様々な機能がある。形も大きさも既に浸透しているiPhoneとは違い、本を丸ごと1ページ読むことができる。また文章の検索機能やブックマークといったことも可能であり、紙媒体にはない魅力がある。唯一の欠点は電池の持ちが長くないというところであろう。
一方kindleはiPadと同じような検索機能や文字を自由に変える機能があるが、読書の多様性でkindleの方が上であり、かつ電池の持ちもiPadを圧倒している。但し「読む」ことだけに特化していることもあり、iPadのように様々なところで役立つわけではない。

PART2「電子出版ビジネスが日本でもいよいよ本格化する」
電子出版ビジネスはiPadやkindleが誕生する前から始まっていたが、iPadやキンドルといったリーダーが出回り始めてから本格化していくことが確実である。
既にいくつかの出版社では電子書籍に本格参入しているが、日本の出版業界の中ではそれに消極的な企業が多い。過去に電子書籍を本格化しようとした時期がいくつかあったが、既存の書店業界や出版業界が理不尽な決まりをつけることによって潰したとされている。
さらには電子書籍に反対する作家も登場しており、日本の旧態依存の体質は電子書籍にも歯牙にかけそうである。

PART3「在米ジャーナリストによる米電子書籍事情 最新レポート」
では既に電子書籍市場が活発化しているアメリカでの出版、新聞などの既存メディアの動向について現地の目から語っている。昨年から電子書籍の動向が本格化したアメリカではkindleは100人に1人は持っているといわれており、電子書籍でも、出版社に頼らず自費出版も行う作家が増加したといわれている。当然自費出版するとしてもプロモーションなど販売促進は自分で行わなくてはいけないリスクは変わらない。

PART4「電子出版ビジネス A to Z」
電子書籍のビジネスに当たっては数多くの課題を抱えている。代表格としては「著作権」の問題である。昨年の夏に「Google Books」の訴訟が話題となった。電子書籍は有料であり、かつ認められたサイトでしかダウンロードできないようであるが、作家によって電子出版に関して否定的であり(とりわけ「日本文藝家協会」は痛烈に否定的である事を表明している)、紙媒体でしか行わないという考えをもつ作家は少なくない。
また流通に関しても、大きな変化をもたらすことは確実であり、特に印刷業界では電子書店などのプラットフォームの構築に躍起となっている。

PART5「電子書籍が変える本をめぐる常識」
15世紀頃に紙の誕生によって活字の重みが軽くなり、誰でも手軽に読めるような時代が誕生した。そして2010年、「電子書籍元年」といわれるような時代にて、私たちの「読書」スタイルはどのような変化遂げる、普段は活字を見たり読んだりするのが一般的とされてきたがこれからはキーワードによって検索をする、画面サイズも調節することができ、簡単に電子書籍を購入したり、だれでも著者になることができる。本がもっと身近なものとなる。

電子書籍の時代はいよいよ本格的に来る。出版業界をはじめ書籍にまつわる様々なところで変化が起こることは間違いない。その変化の中で日本はどのように変化をするか、そして出版に関して先鞭をかけるのは誰かというのにも注目は集まるだろう。