二大政党制批判論 もうひとつのデモクラシーへ

「二大政党制」はアメリカでは長らく続いた政治体系であるが、日本ではごく最近、2007年頃から使われるようになった。現在政権は逆転し民主党が政治のキャスティングボートを握っているが「二大政党制」と言ってもおかしくない。

しかしこの二大政党制は世界中にある政治体制の中でも異質であり、「百害あって一利なし」と著者は切り捨てている。本書は「二大政党制」の功罪とこれからの政治の在り方について主張している。
第一章「政党はどのような存在なのか」
「政党」という言葉をとある辞典で引いてみると、

「共通の政治的主義・主張をもつ者によって組織され、一定の政治的利益や政策の実現のために活動し、政権獲得をめざす集団。」goo辞書より)

という。一つの思想や考え方、そしてビジョンをもとにして集まっている政治家たちのことを指している。
しかし「55年体制」と呼ばれた自民党のように同じ等にいながら様々な派閥を作り、選挙において派閥との戦いを演じてきた歴史がある。現在自民党だけではなく、民主党など同じ党にいながら派閥をつくり、実権

第二章「政治改革論と「政治工学」のはじまり」
「政治改革」と一言で言っても様々なものがある。まずは「選挙改革」があり、衆院選では「55年体制」の時に、「中選挙区制」が主だったが、93年に「非自民8党連立体制」が成立してから現在も続いている「小選挙区制」とんった。ほかにも省庁の改革や参議院の議席数削減など政治に関することが変わると「政治改革」と言える。
しかし「政治改革」をもっとも宣言をしながら実行に移した人物というと小泉純一郎が上げられる。「自民党をぶち壊す」や「聖域なき改革」といったことを掲げ、郵政改革をはじめ様々な改革を成し遂げた。

第三章「二大政党制の誤謬」
現在では日本やアメリカを中心に、先進国では二大政党制が進んでいる。日本では戦後「55年体制」と呼ばれる1.5党体制の時代があったことを考えると、形式は違うとはいえ二大政党制といえるかもしれない。
さて本題にはいるが二大政党制となった要因として、著者は「小選挙区制」にあると指摘している。小選挙区制は細かく選挙の地区が分けられ、さらにその中では1人しか選ばれない。どちらかというと自民党や民主党といった「多数派」に票が流れやすくなる為である。そしてその二大政党制はいささか「二項対立」と呼ばれる現象が起こり、多様な国民がどちらかしか選ばれなくなる。様々な「民意」が二大政党制によって歪曲されるという。

第四章「歴史の中の政党政治―なぜ社会に根付かないのか」
本章では初めて政治や国家が作られた明治時代に遡り政党や政治がどのようであったか、そして章のタイトルにもあるとおり、なぜ社会に根付かないのかについて考察を行っている。

第五章「もうひとつのデモクラシーへ」
日本は選挙制度が確立し、昨年の政権交代によって民主主義であると言うことを実証し始めたが、「55年体制」と呼ばれた時は長らく政権交代が行われず、ゴルバチョフから「日本はもっとも成功した社会主義国家」と揶揄されたことがある。

その時代でも現在でも1〜2党が政権の争いを続けている。その一方で93年のように「8党連立体制」というのも誕生している歴史がある。二大政党制が良いか、多党制が良いか、多様になっている民意を汲むことができるのはどちらかというと、なかなか難しい。現在「政党」は10あるかないかである。しかし選挙権を持っている約7500万人の民意を組み入れられることは、二大政党制にしても、多党制にしても不可能と言っても過言ではない。