あんじゅう―三島屋変調百物語事続

株式会社オトバンク 上田様より献本御礼。
本書は朝日新聞の朝刊で連載されていた作品を単行本化したものであり、「おそろし」の続編でもある。タイトルを漢字に直すと「暗獣」と書く。

舞台は江戸時代、「三島屋」という袋物屋である。場所で言うと神田、東京の中心部からほど近いところにある。その「三島屋」の行儀見習いの基にやってくるお客さまはちょっと奇妙で不思議な人たちばかりである。

私自身、宮部作品は「模倣犯」くらいしかないが、それとは赴きも違っているように思えた。その理由の一つとして挙げられるのが「挿絵」がふんだんに使われていること。これまで小説は挿絵があまり多用されておらず、読み手の想像によって解釈が大きく変わることが多かった。挿絵がふんだんに使われることによって、小説に慣れ親しんでいない人たちも容易に想像しやすくできている。

「百物語」と副題に付けられているが、怪談でよく使われるスタイルの一つであり、1666年に浅井了意の仮名草子「伽婢子(おとぎぼうこ)」により、初めて明文化された。スタイルではアニメやドラマでも出てくるようにろうそくを用いて何人かが囲んで怪談を百話語るというもの。百話終わると怪(お化け)が出てくるという。

怪談というと怖さやおどろおどろしさがあるのだが、本書はそういったものが感じられず、むしろほのぼのさや暖かさがある。全部で500頁以上あり、読み応えがあるのだが、挿絵もあるのでボリュームはそれを感じさせないほどである。