反西洋思想

「哲学」などの思想については古代ギリシャの頃から様々な形で枝分かれしながらも進化していった。そして思想同士の対立が生まれ、後に宗教対立を招き、戦争になった事も少なくない。

とりわけ毛沢東思想(共産思想)やイスラム原理主義は西洋を敵視していた。特にイスラム原理主義は実行という形に写し「9.11」やイラク戦争後の泥沼化を起こしている。
ではなぜ西洋の思想が「敵視」の的になるのだろうか。本書は西洋とイスラムや毛沢東など様々思想をみていくことによってその構図を浮き彫りにさせようという一冊である。

第1章「西洋の都市」
第二次世界対戦、そして約50年にも及ぶ冷戦が終わり、つかの間であるが「平和」と呼ばれる時代となったが、その中で湾岸戦争やイラク戦争、さらには中東諸国やアフリカ大陸での紛争など、後がたたない。
では今できている「平和」とはどこからきているのかというと米国であることから、紀元前にローマ帝国が完全支配してた頃を表す「パクス・ロマーナ」に準えて、「パクス・アメリカーナ」と呼ばれることがある。
本章ではかつてのロンドンやパリから現在のニューヨークの共通点について述べられている。「共通点」とはいったい何なのか、かつてのロンドンは世界最大の工業大国であり、工業の中心をマンチェスターに据えていた。それに追いつき追い越さんとパリも躍起になっていた。しかしドイツやイタリアといった後にナチズムやファシズムといった一党独裁体制に走る国々にとって憎悪の的とされ、現在のニューヨークもイスラムの人々にとって憎悪の的になったという。

第2章「英雄と商人」
イスラム教ではジハードにおける「死者」を英雄扱いするのだという。それはかつての大日本帝国の軍部でも通底するものがある。というのは、現在もそうであるが、国に殉じた人たちは「英霊」として靖国神社に祀られる(一部は「軍神」とよばれることがある)
本章ではドイツと日本の思想を西洋諸国のそれと比較しながら分析を行っている。

第3章「西洋の心」
かつてドイツや日本は西洋に対して攻撃を行った、そして現在はイスラム原理主義者たちが同じ事を行っている。
ここではイスラムや日本からいったん離れて「ロシア」の思想についてピックアップしている。その中で私も知り得なかったロシア(大陸)の歴史についても考察に織り込んでいる。

第4章「神の怒り」
「神の怒り」と表すと「イスラム教」の事を連想させてしまうのだが、旧約聖書を聖典とする「ユダヤ教」も同じ事が言える。「イスラム教」は「キリスト教」と同じく「ユダヤ教」が起源である。イスラム教やユダヤ教では宗教的な法律、いわば「戒律」により厳しく定められている。たとえば女性の装いも決められており、「ベール」と呼ばれる布で目以外すべて覆わなければいけないという。これは「性」にまつわる考え方も絡んでいる。

「宗教」と一括りにしても「キリスト教」「イスラム教」「神道」「仏教」など多岐にわたる。また「キリスト教」と一括りにしても「カトリック」「プロテスタント」「ロシア正教」、イスラムも「シーア派」「スンニ派」それぞれ分かれている。その中でいがみ合いや対立は必ずといっても生まれる。それは現在もそうであるが「宗教」という概念が生まれる以前からあったことかもしれない。
本書は西洋諸国がなぜ憎悪の的になるのかについてイスラムを中心に考察を行っている。「宗教」と一括りにしても複雑な要素が絡み合っている事がよくわかる。

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