本書はキーコンセプトとして「文化」についての考察を行っている。ドイツやイギリス、アメリカ、そして日本とそれぞれ異なる歴史、言語があり、「文化」を形成して言っている。本書は各国の文化の変遷をたどるとともに、近・現代の中でどのような「文化」を形成していったパターンについて考察を行っている。
1.「文化概念の発生と展開」
本章の話に入る際に、「文化」と「文明」の意味の違いについて、とある辞書にて確認してみる。
「文化」は民族や社会の風習・伝統・思考方法・価値観などの総称で、世代を通じて伝承されていくものを意味する。
「文明」は人間の知恵が進み、技術が進歩して、生活が便利に快適になる面に重点がある。
「文化」と「文明」の使い分けは、「文化」が各時代にわたって広範囲で、精神的所産を重視しているのに対し、「文明」は時代・地域とも限定され、経済・技術の進歩に重きを置くというのが一応の目安である。(goo辞書:「文化」の用法より)
一言で言うと、「文明」は歴史上では「インダス」「メソポタミア」などでは様々な技術が誕生したことから現されている。「文化」というとその国の性格そのものを言うことが多く、風習や考え方と言った所を司っている。
本章ではそういった「文化」・「文明」の違いというのをもう少し深い所から比べている。足し科学門では「文化論」や「文明論」と分けていたような気がするがどうだったのだろうか。
2.「ドイツの「文化」対フランスの「文明」」
さてここではヨーロッパの文化・文明のなかでとりわけ際立っていたのはイギリス、フランス、そしてドイツである。ここではドイツとフランスにスポットを浴びているが、ドイツは技術と言うよりも国家やナショナリズムの形成といったどちらかという「文化」について、一方フランスはフランス革命や産業革命などが起ったことから「文明」をピックアップしているのではないかと思う。「文化」と「文明」は前の章で違う意味合いを持っているのだが、あえて比較している所が面白い。
3.「ネイションとナショナリズム」
「ネイション」はもちろん「国家」「国(民)」、「ナショナリズム」は「民族」と定義されるのだが、ここでも「ネイション」の由来と文献からの「ナショナリズム」の変遷について、が中心である。
4.「イギリスの文化概念」
文化の変遷が最も印象的に残っているのがイギリスと言えるだろう。もっとも産業革命以降はジャーナリズムや評論などが誕生したとしても有名である(「コーヒーハウス」)。
5.「伝統の創造」
日本でも、それ以外の国でも「伝統」という言葉がついて回る。日本では「伝統芸能」や「伝統技術」、私の趣味であるF1でもモナコGPは「伝統のモナコ」と言われる。
ではこの「伝統」という言葉はいったいどこから来ているのだろうか。どうやら14世紀のラテン語か来ているのだという。そのところでは「受け渡し」「知識の伝授」というのが挙げられている。
6.「アメリカの文化概念」
アメリカが建国されたのは約250年前である。その時はイギリスなどからの移民による文化が栄えてきたが、やがて多くの移民を受け入れることによってイギリスとは違い、多種多様な文化や言語が飛び交うことによって独自の「文化」を形成することができた。
7.「文化相対主義」
これまでは「国」単位での「文化」について述べてきたわけであるが、ここでは個人の「文化」について、を述べている。「国」単位であればどのような風習やしきたりがあると言うことから展開することは可能であるが、「個人」となるとそれぞれ性格や習慣が違ってくるため、「文化」や「価値」というのは一概に結論づけることができない。これを「文化相対主義」と本章では呼んでいる。
8.「人種と民族」
3章で述べた「ナショナリズム」について「民族」と書いたのだが、実際に「民族」はどのような概念を持っているのか、についてを述べている。
9.「カルチュラル・スタディーズ」
簡単に言えば「文化の研究」、学問領域で言う所の「文化論」への誘いにあたる所である。
「文化」に関して批判的、及び懐疑的に分析を行う方法と言うよりもそれを行うための「読書案内」と言うべき所と言える。
10.「日本の文化概念」
「文化」や「文明」と言った言葉が使われ始めたのは明治時代に入ってから、ちょうど「文明開化」が起った頃である。当時はヨーロッパなどの文献から「文化」のあり方を読み解いていくことが主流だったため翻訳に関する問題があったのだが、翻訳技術が発展していくと、今度は日本独自の文明や文化の研究にシフトしていった。しかし第二次世界大戦後はアメリカからの文化概念の流入によって、日本としての文化のあり方が問われてきている。
日本独自の文化のあり方とは何なのか、第二次世界大戦後、文化・文明はどのように変わっていったのかは本書では解き明かすことができなかった。しかし文明や文化としての歴史を見ることができる所がなかなか良かったように思える。
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