私はあまりラグビーを見たことがないのだが、ラグビーでもっとも有名なものといえば、ドラマ「スクールウォーズ」がある。これについては全部ではないものの観たことはある。最近では今年の花園の決勝戦、東福岡対桐蔭学園くらいである。
本書は熱きラガーマン石塚武生の生涯とラグビーにかける熱い思い、ラグビー哲学、そしてラグビーで得た人生論など生前の石塚氏を追いかけた一冊である。
第1章「石塚武生の原型」
石塚氏がラグビーに出会ったのは高校2年の冬のこと、それまではサッカー部に所属していたという。当時は助っ人でラグビーの試合にでたのだが、ラグビーの魅力にはまり、転部したのだという。
そこから早稲田に入り、そこでもラグビーで活躍、実業団へ入り、さらに日本代表としても活躍を遂げた。
第2章「再生の道」
しかしエリートコースは長続きしなかった。度重なる怪我、当時は「大型化」を押し進めていった日本代表構想から外れ(石塚氏の慎重は170cmしかなかった)、どん底に陥った。現役への思いを捨てきれず、他チームへの移籍、選手・指導者としての二足わらじでの活動、やがて監督にもなった。しかし突きつけられていた現実は「辞任勧告」という残酷な形であった。
第3章「プライド」
それでも指導者としてラグビーへの情熱は捨て切れていなかった。イギリスのクラブで指導を行い、帰国。全日本代表監督をつとめながら後に書く「タグラグビー」について教えた。
第4章「タグラグビーで全国行脚」
このタグラグビーを小学生にも教えることがあった。
では「タグラグビー」とはいったい何なのか。それは、
・ラグビーを基にした球技で、タックルの代わりに腰につけた2本の「タグ」を取り合うゲーム。(p.23より抜粋)
タックルなどの危険がないため小学生でも安心して遊べる。そして何よりラグビーの愉しさを教えることができる。
全国の小学校を行脚して教えたことがきっかけとなり、小学校の教材になったのだという。
第5章「少年院で体当たり!」
小学校への指導を続けながら、少年院の人たちに「タグラグビー」を教えるという全国初の試みも行った。ラグビーを通じて、自らの過ちを改め、前向きに生きていくことを教え込む。そして自ら日本代表の思いでについても話すなど院生たちの心の琴線を触れさせた。
そして高校ラグビー部監督も勤め、生徒たちを花園へむかう半ば、この世を去った。57歳というあまりにも早すぎる死だった。
スポーツに限らず様々なものを通じて「生き方」や「人間」を学ぶことができる。石塚氏はそれを子供たちにラグビーを通じて熱く教えた。本書を読むと石塚氏の「ラグビーに対する思い」は言葉では言い表せないほどだったと言っても過言ではない。
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