大銀杏を結いながら

昨日の昼に、大相撲春場所の中止が正式に決まった。八百長問題から端を発した一連の不祥事による中止は史上初であり、それ以外の理由での中止は戦後間もない時の中止(1946年夏場所)以来の事である。よく「相撲は国技」と言われているのだが、実際にそう名付けられた理由としては深い理由付け、例えば法律に制定されているような確固たる証拠はなく、相撲の聖地として「両国国技館」という名にしたと言うことからつけられたと言う程度でしかない(領国が建てられる前も「蔵前国技館」が舞台だった)。

それに朝青龍をはじめ、野球賭博や八百長など不祥事や品格にまつわる問題は今に始まったことではなく、大横綱と呼ばれる大鵬も1965年に拳銃を密輸入していた事件もあれば、北の富士の豪快エピソードもあれば、双羽黒の廃業(親方との諍いが原因)もある。不祥事やしがらみなどが根深い中、信頼の回復は長期にわたるだけではなく、非常に難しい。

さて、本書は歴代の横綱・大関の大銀杏を結い上げてきた特等床山である床寿氏自らのエピソードを綴った一冊である。この道50年にも及ぶ床山人生の中で幾多もの力士を結ってきた中で、床山にしか知らないエピソードや大銀杏の結い方に至るまで、TVや生で相撲を観るだけでは良くわからない所関しても綴っているため、勉強になるだけではなく、相撲の奥深さというのが窺える。

同時に床寿氏はこの騒動、そして春場所の中止についてどのように思っているのだろうか、と読んでいてふと考えてしまった。