ギンガ

小説を読むと不思議な感覚に見舞われるが、本書は今までの小説の中でも最も不思議な一冊と言える。関西から世界へ、そして世界から関西へと移るバンドの物語であるが、風変わりさはまさに良い意味での「奇天烈」な作品と言える。

確か、内容にも「訳のわからない狂気」と言う言葉があったのだが、まさにその通りと言えよう。むしろその「狂気」がロックに、そして音楽に昇華させていると言った方が良いのかもしれない。時折歌詞も盛り込まれており、それが狂気を増幅させているような気がしてならない。

ただちょっと気になったのが、本書はフィクションなのかどうかという錯覚を持ってしまった所にある。一人称である「私」が時折著者自身のことを指しているように思ってしまった。もしかしたらフィクションと自らの感情を混同しながらも本書を描ききった、そのような感じが本書を読みながら見えてきた。