29歳からの人生戦略ノート

これまで数多くのノート術に関して読んできた。ノート術で共通しているものと言うと「過去」と「現在」を記録していくことにある。「過去」と言えばこれまで起こったことや考えたこと、「現在」は今思っていることややっていることなどを表す。記録をしていくことによってある程度脳にバッファ(余白)が生まれ、そこから新たな思考が入ることで相乗効果が生みやすいとされている。

しかし、本書は今までのそれとは少し違う。というのは自分の夢や目標、言わば「未来」に当たる部分も「ノート」を使って記録していることにある。未来も「記録」することによって次に自分のやるべき事も自ずと見えてくる。そしていつの間にか目標やビジョンを達成することができる。本書はそのような一冊である。

Part1「なぜ、人生には戦略とノートが必要なのか?」
「人生に戦略は必要」「人生に戦略は必要なし」と様々な意見はあるだろう。今回は「人生に戦略は必要」という所に目を向けてみる。
社会人になってからは与えられて仕事に集中していれば良いだけだが、30代に入ってくると次第に自分で仕事を回す、それだけではなく部下に仕事を与える役割もあり、重役クラスへの根回しなど担うようになってくる。中にはプロジェクトや部課のリーダーを任される人もいる。
本書のタイトルである「29歳」はまさにそのような時期の始まりと言える。その中で自分がやりたいこと、目指すべきものが見えてこなくなってしまいだすのもこの頃である。
そういった状況の中で自分はどうあるべきかの羅針盤を持つために「人生戦略ノート」は必要であるという。

Part2「今と将来のギャップを埋める「人生戦略ノート」」
「今と将来のギャップを埋める」となると目標と現実のギャップを見て、「自分は何をすべきか」を見つける、いわば「逆算式」がメジャーになっているのだが、著者はそれでは逆効果であり、むしろ現在を「積み上げながら」目標を達成することを推奨している。
本章では「人生戦略ノート」の概要について説明している。具体的な中身については次章以降紹介される。

Part3「たった1行からはじめる「成長日記」」
「千里の道も一歩から」の如く「ノートを使うのもまず一行から」と言うべきかもしれない。
自分の足跡を1行からでも書くとどこが原因なのか、そこから何をしたらよいのかを見いだしながらノートに書き足していく。そこから新たな目標を見いだし、それに向かって行動を起こす、行動した後、ノートでフィードバックを行い、次の目標策定につなげる。
いわゆる「PDCAサイクル」ができあがる。

Part4「自分だけの最強のビジネス書をつくる「虎の巻」」
行動やフィードバックをしていく中で、学んだものは少なくとも1つ以上ある。学んだものがそのまま「ノウハウ」になっていくわけである。本章はそのノウハウを「虎の巻」として、自らのビジネス書にまとめるような事を紹介している。
既存のビジネス書と大きく違う点は「進化する」ことにある。

Part5「不安をかき消す「ストレスノート」」
本書の中で「私もやったことがある」所である。しかし本章の内容とは少し違って、大学受験時、勉強中にでた負の感情をそのまま書き殴るというものをやっていただけのことである。ちなみに「この本」を実践した形をずっとやっている。
ちなみに本章はそのような形ではなく、ストレスであるエッセンスを抽出し、そこから原因や対処法を捻出していくという形である。

Part6「これからの5年で飛躍し続ける「人生計画ノート」」
経営でも「五カ年計画」というのがあるように、人生においても「五カ年計画」を立ててみよう、というのが本章の狙いである。多かれ少なかれ目標を決め、そこから得られるチャンスやリスク(本章では「恐怖」と表現している)をノートに表しながら計画に落とし込んでいく。本章では「SWOT分析」など経営学にまつわるものも出てくる。

Part7「計画倒れで終わらないための「実行約束ノート」」
緻密な計画を立てても、いざ実行してみると計画倒れに終わってしまう例は少なくない。私も元々は計画を立てる人間だったが、計画倒れが日常茶飯事となってしまい、結局やめてしまった過去がある。
計画を絵に描いた餅に終わらせないためにToDoリストやデッドラインをつくることによって計画倒れを未然に防ぐ。さらに仕事だけに終わらせないためにプライベートも予め予定をたてる事によって仕事もプライベートも充実するようにできる。

Part8「仕事とプライベートが充実する「ビジョン決定ノート」」
目標の先にあるのは自分の持っている「ビジョン」である。そのビジョンを持つためにも人生戦略を立てる、目標を立てる、そしてそれをノートに書きながら足跡をつけ、フィードバックをする。一朝一夕では目標もビジョンも達成することはできない。「継続」こそが大きな宝となる。

最初にも書いたとおり本書はこれまでのノート術とは違い、「未来」にフォーカスをしている。「私はまだ29歳にもなっていない」「もう30代だ」と言う世代にも「これからどうすればよいのか」「これからどうしたいのか」という考えはあることだろう。その人たちにも本書は有効である。