本書を紹介する前に、「予言」と「預言」の2つの言葉の違いを紹介したい。
「予言」・・・未来の物事を予測して言うこと。また、その言葉。
「預言」・・・キリスト教で、神託を聴いたと自覚する者が語る神の意志の解釈と予告。また、それを語ること。(いずれも「goo辞書」より)
本書はタイトルにあるとおり後者のことを指しており、9.11事件以後の世界をフィクションという形で映した作品である。
「9.11」と「預言」、陰謀論の話となってしまうがこれには密接な関係があり、一時期TV番組や書籍などで「聖書の暗号」というのが話題となった。その暗号には9,11が起こることも書いてあり、注目された。聖書の暗号については他の予言と同じく、都市伝説の可能性があるため、信憑性はあるとはいえない。
それはさておき、本書の著者ダニエル・キイスと言うとまず連想するのは日本でもTVドラマにもなった「アルジャーノンに花束を」を思い浮かべる。知的障害者の奮闘を描いているが、本書は境界性精神障害を持った人を主人公に据えながら、9.11事件という外的要因とともに精神障害を持つ、という内的要因の双方に要因を持つ主人公を描いている。「二重苦」という言葉を使うのは正しいのかわからないが、内的にも外的にも絶望の淵に立ちながらも主人公は一筋の希望を見つけ、それを目指していく姿に本書を読んでいる私も心を打たれた。
本書は心的に悩んでいる人にとっては是非読んで欲しい一冊である。
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