組織力 宿す、紡ぐ、磨く、繋ぐ

「組織」は会社のみならず、国、地方行政、公共団体など、大小はあるものの必ず存在する。おそらく人生において「組織」に触れたり、関わったりすることが必ずあるだろう。

必ず関わる「組織」であるからでこそ、どのような「組織」でありたいか、というのは組織の数だけパターンはある。しかしそれでは「船頭多くして船山に登る」という諺があるとおり、方向性も指し示すことができないまま組織の結束力などが低下してしまう。

本書では「強い組織」を作るためには仕事を含めてどのようなことを行えば良いか、について示している。

第1章「組織力を宿す――組織の合理性」
ここでは「組織とは何か」「どのように構成されているか」について「解剖」をする、つまり組織のメカニズムとともに、問題解決や意志決定、合理性について分析と提言をしている。
組織の最終目標があり、その中で様々な問題や壁に直面する。著者は問題解決、もしくは目標を達成するための「プロセス」が大事であると主張している。
企業でも目標が達成をしていても一発逆転のようなスタイルでは何者にもならない。プロセスの中でうまくいっているものもあれば、うまくいっていないものもある。経営でいう「フィードバック」ができるのも「プロセス」があるに他ならない。

第2章「組織力を紡ぐ――仕事を共にする」
組織を紡ぐ為の第一段階として「コミュニケーション」を取り上げている。「組織」には年代や生き方、さらには肩書きなど様々な人が集まる。その中で「コミュニケーションの齟齬」は必ずといっても良いほど起こる。
本章ではその傾向のみならず、「仕事を共にする」意味についても解説をしている。

第3章「組織力を磨く――経営的スケール観」
私がつくづく思ってしまうのは「協調性」についてである。組織が強くなるために「協調性」は必要なことであるが、それと同じ意味合いで「同調性」というのがある。
「協調性」と「同調性」。この違いはいったい何なのだろうか。

「協調(性)」…互いに協力し合うこと。特に、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うこと。(goo辞書より)
「同調(性)」…他に調子を合わせること。他人の意見・主張などに賛同すること。(goo辞書より)

協調と同調は類してはいるものの、意味合いは異なっている。「協調」は意見が異なっても同じベクトルに向かって協力する事を意味している一方で、「同調」は自分自身の意見を持つことそのものを否定している。「協調性」と「同調性」は似ているが、決して同じ意味合いではない事を心得た方が良い。
「学習」と「満足」、そして「助け合い」が本章のキーワードであるが、もっとも組織の中でしかできない「学習」、育つことのできるのりしろのわかる「満足」など学べるところが多い。

第4章「組織力を繋ぐ――あなたの仕事」
組織の中でもっとも何者にも代え難いうれしい言葉に「またあなたと仕事がしたい」、「あなたはこの組織になくてはならない人間だ」というのがある。その反対には「代わりの人間なんかいくらでもいる」というのはこれ以上ない屈辱であろう。
組織という人間のがんじがらめの中どこであなたは光り輝けるのか、今までの仕事の中で見つけるのも自らの仕事の一つである。

人間として生きていく上で「組織」は切っても切れないものである。社会人となれば、そのことを意識していかなければ社会人人生を渡ることは非常に難しい。本書は組織に居る人たちにとって是非読むべき一冊と言える。