日本の伝統芸能には様々なものがある。有名なものでは歌舞伎、能、狂言、文楽、浄瑠璃などがある。では本書のタイトルにある「万歳師」はいったいどのようなものなのか。
「万歳(萬歳)」は元々雅楽の千秋楽とともに「万歳楽」という曲が出ている。これは君主の長久(時代が長く続いたこと)を祝うために作られており、そこからできたと言われている。
本書はその中から「尾張万歳」の保存のために尽力している男たちの物語を綴っている。
「尾張万歳」は調べた所によると1996年に「重要無形民俗文化財」に指定されており、現在でも寄席などで観ることができるという。しかし戦後以降、尾張に限らず万歳の文化は衰退し、消滅、もしくは廃れてしまったものも少なくない。それを憂いた方々が保存活動を行い文化財に指定された。それだけではない。形式的に文化財となったのだが、それを受け継ぐ人が足りない。本章では「最後の万歳師」がいかにして万歳の魅力を教える、と同時に復活に向けて尽力したかを描いている。
歌舞伎とも狂言とも違う「万歳」の魅力が詰まっているように見えた一冊であった。
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