ロマンポルノと実録やくざ映画―禁じられた70年代日本映画

日本映画にも様々な分野があるのだが、本書で紹介される分野はどちらかというと「アウトロー」の部類に入るのかもしれない。とはいえ昔のやくざ映画というと高倉健が主演した「網走番外地」もあれば、菅原文太や松方弘樹、梅宮辰夫が出演した「仁義なき戦い」はあまりにも有名であるため、必ずしもマイナーとは言えない。本書はタイトルにあるようにロマンポルノややくざ映画を中心にめくるめく70年代の日本映画を紹介、そして解き明かしてくれた一冊である。

第1章「セックスとバイオレンスの饗宴」
この言葉を見たり聞いたりすると拒否反応を起こす人もいるかもしれないが、本書の根幹となる「ロマンポルノ」と「やくざ映画」を取り上げている。
まずはさわりの部分であるが、ここの部分でもう私でも良く知らない映画が数多く取り上げられている。知っている物では「仁義なき戦い」くらいである。

第2章「狂い咲くジャンルの妙味」
さわりが終わったところでいよいよ本領発揮という所か。ここでは前章から「やくざ」や「ポルノ」の各映画も紹介されているが、あくまで「中心」がそれであり、アクションや青春映画も取り上げられている。
70年代はどのような時代なのか、映画は現在の時代の投影にも見えるのでその時代をおさらいするという考えから本章に紹介されている映画を観るというのもお勧めできる。しかし気がかりなのがある。本書で取り上げられている映画はDVDでも観られるか、というところである。しかし本書ではDVD化されている作品にはそれも併せて紹介されているため、その心配は不要である。

第3章「異文化とマンガのスパーク」
講談社の作品の人物が亡くなったときに葬式を行うのだという。本章でも、「あしたのジョー」の力石徹の葬儀が執り行われたことを綴っているが、他にも一昨年だと福本伸行氏の「アカギ」や「天」でおなじみの赤城しげるの十周忌法要 が行われた。
余談はここまでにしておいて、本章では、マンガや歌謡曲から飛び出した映画について取り上げられている。歌謡曲だと昭和初期に歌謡曲となり、戦後映画化された「蒲田行進曲」が挙げられ、マンガでは最近では「君に届け」「うさぎドロップ」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が挙げられる。

第4章「日本映画の世代交代」
70年代の映画は様々な形で世代交代が行われたとされている。戦後間もない時期から日本映画を支えてきた監督や俳優などから新しい人たちがヒット作品を生むという構図が形づくられた。本書はその新しい風といわれる監督や作品、俳優を映画とともに紹介している。
70年代の映画、私にとってはかなり遠い存在であった。もちろん生まれていなかったのもあれば、元々映画に関して興味を持っていなかったため映画そのものにふれることもなかったためである。本書を読んでその距離が少し縮まったように思える。あとは本書で紹介されている映画を観てみることで、本書の深みはますます増す。