人材の複雑方程式

「人材はどのように扱われるのか」

人材のことについて悩む方々であればそれに直面することも少なくない。しかし人材問題ほど問われるものは高度であり、かつ複雑なものである。それは個人々々の価値観や考え方がバラバラである人間を扱っているのだから。

本書はその人材マネジメントのあり方の現状と、働き手・経営者双方の視点で見た「働き方」や「関係性」について解き明かすとともに、その関係を良好にしつつ、双方にとって「Win-Win」となるような人材マネジメントについて提示している。

第一章「問われる日本企業の職場とリーダーシップ」
かつては高度経済成長もあり頑張れば頑張るほど、経済状況も良くなるという時代があった。しかし「バブル崩壊」が起こってからその考えが通用しなくなり始めた。長期雇用も崩壊され路頭に迷う労働者も増えてきた。
経営者の人材観などについて本章で考察を行っているが、この中ではトヨタ自動車代表取締役(現:同相談役)の奥田碩氏について取り上げられている。それと同様なものを「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏が述べた記事も覚えている。それと対極に会ったのが日産自動車、そしてルノーの会長であるカルロス・ゴーンであろう。

第二章「なぜリーダーが育たないのか」
日本の職場はリーダーが育たない環境にあるのだという。
その大きな理由として「責任の重さ」や「業務の多忙さ」が大きくあげられているのだという。逆にとらえるのであればそれだけ「やりがいがあるのでは」とも考えられ留かもしれないが、見返りなどが期待されないような状況ではやりがいがないという意見もある。ほかにも「プレイングマネジャー」という現場で働きながらリーダーをするという人もいるのも現状として挙げられる。
しかしもっと大きな要因となっているのは「期待」を過度にかけていることにあるのではないか、という。これは企業に限らずとも私たち国民全体の問題としてもとらえることができるのでは、と思う。

第三章「人と組織の関係をどう考えるか」
本章では「人間関係」というよりも「組織」、さらには「人材育成」についての考察を行っている。
バブル崩壊の頃まであった「終身雇用」に関する「回帰」、人材教育についてを述べている。

第四章「働き方革命の始まり」
第三章までは日本における労働の現状を考察してきたが、本章では働き方をいかに改革すべきか、の提示を行っている。
昨今では「ワーク・ライフ・バランス」や「成果主義」の失敗や、誤解、うまく行かない理由を取り上げながら、正しいあり方について紹介している。

第五章「働きやすさと働きがいを目指して」
「働きやすさ」と「働きがい」、それぞれ相反している印象に思えるのだが、本章ではその双方ともかなえることができることを前置いたうえでその両方についてをどのように叶えるかを提示している。

「人材マネジメント」もそうであるが、本書では「働き方」や「教育」にまつわるところまで言及している。それでいながら解決案も提示されており、それがどのような効果をもたらすのかわからないがやってみる価値はあるのではないか、と私は考える。