ずるい考え方~ゼロから始めるラテラルシンキング入門

これまでビジネスにおける考え方は「ロジカル」というものが罷り通っていた。私は仕事柄良く本屋に立ち寄ることがあるが、そのビジネス書コーナーには「ロジカル」を関する本は多く、タイトルにある「ラテラルシンキング」に関する本は少なかった。

もっと言うとビジネス書としてその考え方はある程度認知されているのだが、実際のビジネスの場では図らずも軽視されてしまっているのかと思ってしまう。

本書はめくるめく「ラテラルシンキング」の世界を実践も交えて紹介している。

第1章「ようこそ! ラテラルシンキングの世界へ」
「ラテラルシンキング」は文字通り直訳すると「水平思考」であるが、これはどのようなものか。そして「ロジカルシンキング」とはどのような違いがあるのだろうか。
「ロジカルシンキング」は一つのことに関して垂直に「深く」掘り下げることで唯一の「正解」を見いだす手法である一方で、「ラテラルシンキング」はいろいろな角度から、多くの「解答」を見つける方法である。ある種「ブレインストーミング」にも似ている。

第2章「ラテラルシンキングに必要な3つの力」
「ブレインストーミング」に似ていると考えると「固定観念にとらわれず疑う力」も頷ける。
さらに「ラテラルシンキング」をつけるに必要な力として「抽象化」や「偶然」も重要なキーワードとして挙げられる。必要な力をみてみると「ロジカルシンキング」とは正反対の考え方と言っても過言ではない。

第3章「最小の力で最大の効果を出す」
本章のタイトルを見ると、「レバレッジ(てこ)」の原理であるがラテラルシンキングは他者の考えや作業を組み合わせることによって大きな成果を生み出すことができるといいう。

第4章「相手の力を利用する」
前章にある「他者の考えや作業を組み合わせる」ことの一つとして「利用する」こともラテラルシンキングの醍醐味の一つである。本書では「コバンザメ」「寄生虫」「ヤドカリ・イソギンチャク」と定義している。どちらも相手の力を利用しているのだが、その方法によって違いがあるという。

第5章「異質なもの同士を組み合わせる」
アイデア術でも本章のタイトルのような方法を採用している方法はある。
ラテラルシンキングもそれと同じであるが、組み合わせにも相性を意識するところに違いがある。

第6章「先の先を読む」
「先の先を読む」というのは、目先の利益を追わず、最終的に大きな利益を収めるにはどうしたら良いのかを見いだすというところにある。ここでは別の章とは違いケースを3つと多めに取り入れられている。

第7章「ムダなものを捨てない」
偶然から新たな考えやアイデアを見いだすにはムダなものも捨てない方法にあるという。おそらく合理的に働きやすい日本人にとってはなかなか馴染みが薄いのではないかと考えてしまう。
しかしムダなものから新しいアイデアや発見で世界的なある「賞」を取っている方もいる。本章にも事例で紹介されている。

第8章「マイナスをプラスに変える」
企業にしても個人にしてもプラスな側面もあれば、マイナスの側面もある。そのマイナスの面をプラスに転化するにもラテラルシンキングの醍醐味であるという。本書でもマイナスの側面を武器にして成功をさせた事例を紹介している。
たしか誰かが言っていたが「コンプレックスは武器になる」という言葉を聞いたことがある。本章はまさにそのようなことを言っているのかもしれない。

第9章「ラテラルシンキング力を試してみよう」
8章までは理論編として様々な方法を紹介したのだが、ここでは今まで学んできたものの実践編として演習問題を4つ紹介している。一人でやるのも良しだが、仲間で一緒にやると様々な答えがでるのでおもしろい。「正解」が無いので色々な答えを作ることができるし、そこから連鎖して答えが出てくるので、考えることが面白くなる。

「ラテラルシンキング」には正解がなく、ロジカルシンキングではまずできない突飛な答えを導き出すこともできる。それが思わぬ成功のもとになることから、思わず「ずるい!」と言いたくもなる。だからでこそ「ラテラルシンキング」は「ロジカルシンキング」と並んで是非身につけるべき技術、というのを見いだせる一冊である。