芸のこころ

「芸」とは何か。それを考える前に日本における「演芸」には様々なものがある。たとえば「能」「狂言」「浄瑠璃」「文楽」「歌舞伎」「落語」と様々である。
本書は歌舞伎の先々代(八代目)板東三津五郎と安藤鶴夫の対談形式にて芸・日本人・世間の諸々を語った一冊である。

一.「芸のこころ」
芸を極める最初のプロセスとして「模倣」から始まるという。相手から口伝いで教えてもらうことや、教科書から学ぶというのがあるが、それは滅多にない。むしろそれをやるのはほとんどなく、むしろ相手から「(技術や仕草などを)盗む」ことで模倣の第一歩と言われている。
ちなみに本章ではそれだけではなく「落語」や「歌舞伎」など幅広い範囲での「芸」とそのものの歴史にまつわることについて掘り下げている。

二.「日本人のこころ」
日本人の在り方・歴史・文化についての対談である。とはいっても、時事的なものではなくむしろ「文学」や文化に待つわる内容がほとんどである。

三.「世間のこころ」
むしろ時事的な内容に関してはこちらのところに収められている。板東三津五郎氏は有名な歌舞伎役者であることから執筆も交友も広い。その中でも政治家やメディアに関するエピソードも盛り込まれている。

本書の初版は昭和44年6月。おおよそ40年前に出版されたものである。もちろん対談を行っている両者はすでに故人であり、没後40年を越えている。その40年の時を越えて語り継がれるべきものがあることから本書は復刻されたのではないか、と私は思う。