約3・4年前までは「自動車王国」として日本が君臨していた。しかし景気は急速に減速し、やがてトヨタやホンダに対するリコールが相次ぎ、追い打ちをかけるかのような「超円高」がすすみ、自動車業界の衰退が著しくなったと言われている。
本書は自動車業界が生き残るためにどのようなクルマをつくるべきか、業界はどうあるべきかを提言した一冊である。
第1章「自動車の行方」
ご存じの通り、日本におけるクルマの販売台数は右か下がりである。とりわけ私たちの世代はクルマに興味はあっても、クルマを買いたいという購買行動に至っていない現実がある。購買欲がない、あるいは嫌消費といえばそれまでであるが。
とはいえ自動車業界も環境問題に向けての取り組みを強化しているのは事実である。本章でも紹介しているのだが、F1ではエンジンの馬力の規制を強化する代わりに「エネルギー回生機能」として「KERS」を取り上げている。
著者はレーシングカーにも携わっているせいか、F1を創としたモータースポーツへの思いもつづられており、モータースポーツファンである私も胸を打った。
第2章「ハイブリッド急変」
ハイブリッドエンジンとディーゼルエンジンのどちらが環境によいのか、という論争が自動車業界関係者の中でおこったのだという。それぞれの立場や考え方はあるのだが、蚊帳の外にいる私たちはCM、あるいは店頭や雑誌から見ることしかできなかった。
後にハイブリッドという言葉が乱舞し始めた所を見ると「ハイブリッドの勝ち」と言えるのかもしれない。
第3章「EV爆発前夜」
EVは簡単に言えば「電気自動車」である。私が仕事の関係で虎ノ門にいたことがあるのだが、今年の7月まで電気自動車の充電所らしき建物があった(現在では取り壊され、駐車場になっている)。たしかタクシーだったような気がするが。
それはさておき、本章ではEV戦争の構図とこれからの自動車について論じている。
本書は「NIKKEI NET」の日経ecologyの連載コラム「2010年に生き残るクルマ」で2年間連載されていたコラムの中から厳選し、かつ加筆修正したものである。2007年〜2009年のものを掲載しており、現在から見ても若干古い印象はあるものの、現在と当時とを比較するのには格好の材料となる。ましてや以前はこのようなことがあったということを見返すだけでも結構おもしろい一冊でもある。
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