緋色の楽譜

フランツ・リスト

世界的なピアニストにして作曲家として今日でも語り継がれている。リストといえば指が長いことで有名で、リスト本人でしか演奏できないほど非常に難しい「パガニーニによる大練習曲(特に「ラ・カンパネッラ」はあまりにも有名)」という名のピアノ曲もあるほどである。
そのリストはピアノ曲やピアノ協奏曲に限らず、オペラや管弦楽曲も手がけており、生涯にわたって生み出した曲数は数百にも及ぶ。しかしリストが作曲していながら未完の作品もあれば、消失し、未だに見つかっていない作品も数多くある。

本書は未だ見つかっていなかったリストの未発表曲の楽譜を巡ってワイマールをはじめ、ニュルンベルグ、コペンハーゲンなどドイツに留まらずヨーロッパ全域にて起こるミステリーを描いている。

天才ピアニストがリストの書いた一遍の詩を見たことにより物語は始まるが、スケール感や読むにつれて謎が深まっていく展開、そしてリストそのものの人生、それがいくつも重なって紡がれていっているため、上下巻の大長編であるが、「長い」と言うのを感じさせない一冊であった。