1000ヘクトパスカルの主人公

よく天気予報で「○○ヘクトパスカル」という単位が使われる(一昔前は「○○ミリバール」だった)。これは簡単に「気圧」であり、高ければ高いほど下降気流が活発になるため雲が出にくく、低いと雲が広がりやすく、雨や雪が降ることもある。

1000ヘクトパスカルは青空が広がっているとはいえ若干の雲もある現象であることが多く、「晴れ時々曇り」をまさに表現した数とも言える。

本書は就職活動を控えた大学生が、不自由も不満もない生活の中で感じた不安があった。その不安から空を見上げていたが、空の中で感謝の気持ちを覚え、その空の下の中で生きる人たちを見た。空を見上げるシーンの部分を読むと、私が大学生の時に出会った「無力と微力の二人の天使」を思い出させる。言うまでもなく、本書の主人公は「無力の天使」に近い存在であると思う。空を見つつ、学生したり、アルバイトをしたりしているので、完全に「無力の天使」とは言えないが「空を見る」ことによって空の美しさとともに、空を見なければ気づかなかった「感謝」の気持ちを表すようになった。言葉や人だけでは知り得ない「空」の意味。本書はそれを表しているのかもしれない。