おそらくバブル崩壊してから「うつ病」が急激に増えており、社会問題にまで発展している。「うつ病」などの「心の病」に関する本はいくつか読んでおり、それに関して様々な収穫があった。本書は「うつ病」の増加に関してスポットを当てている。
第一章「うつ病患者が増えている」
「うつ病」という名前はバブル崩壊以前から使われていたのだが、使う頻度が増えたのはバブルが崩壊された頃からであり、急速に増えたのは1999年になってからのことである。なぜ1999年になってからなのかは次章にて取り上げられている。
「うつ病」と一括りにする事ができず、病自体の度合いや種類など様々である。
第二章「なぜ一九九九年からうつ病患者が増えたのか」
では1999年に急増した理由はいったい何があったのだろうか。もっともバブルが崩壊したのは90年代前半、山一証券などが倒産した金融危機は1997年であった。その年にゆかりがあるとするならば「ノストラダムスの「1999年7の月」」があるが、それとうつ病とは関係ない。
うつ病が増加した原因、それは「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」が日本で初めて導入された年であった。
第三章「なぜ「SSRI現象」は起きるのか」
「SSRI」は前章でも言ったように、1999年に導入されたのだが、その年を境に急激にうつ病患者、ならびにメンタル休職者が増大した。「SSRI」が導入された理由なのか、それとも「SSRI」による副作用にあるのだろうか、と誰もが疑うかもしれない。ちなみに言うとこれは日本に限らず、先進国でも「SSRI」が導入された年を境にうつ病患者が増加しているデータもある。
なぜそれが起こるのだろうか。それは「SSRI」の導入により、その投薬を進めることが増え、さらに薬を売るためのある種「押し売り」のような現象により、そうさせているのだという。医療と薬の関係。それは「SSRI」に限らず、他の病気でも言えるのかもしれない。
第四章「「SSRI現象」によるうつ病診療への影響」
「うつ病」が増大したのは、うつ病そのものが増えた訳ではなく、「うつ病」の受診者が増えたことによって表れている。むしろ統計的にとられるのは後者であるのだが。
第三章で述べたようなことについて本書では「SSRI現象」と呼ぶが、本章ではそれと「うつ病」診療との関連性について述べている。
第五章「抗うつ薬の有効性について」
いったんうつ病になり、抗うつ薬を投与したり、処方箋として常用したりする。しかしそれで関知するわけではなく、最悪の場合一生つきあう病気となり得る。
しかも「抗うつ薬」の効用どころか「抗うつ薬」を投与することへの疑問も本書では投げかけている。
第六章「増え続けるメンタル休職への取り組み」
抗うつ薬への疑問、うつ病患者への増加、それらを考えると新たなうつ病になってしまうような気がする。うつ病を撲滅する道はおそらく遠いものとなってしまっているのかもしれないが、それを未然に防ぐ方法として本章では企業におけるメンタルヘルスの取り組みの一つとして「メンタル休職」を取り上げている。
うつ病が急激に増えた原因の一つとして「SRRI現象」を本書では取り上げている。確かに一理ある。しかしそれは新薬が誕生することによって啓発キャンペーンやある種の押し売りを行うが如く、病気でもない人を病気扱いするようにされているのだと。本書はそれを投げかけているのではないだろうか。
コメント