最後の授業というとランディ・パウシュという方の人生にまつわる重要なことの授業を想像してしまうのだが、本書にて紹介される「最後の授業」は、精神分析の権威が教授を引退するまえの最後の講義の事を意味している。引退するにあたり、学生たちに何を伝えたかったのか、精神分析を研鑽を続けて何を残したのか、本書はその結晶が詰まっている。
Ⅰ.「最後の授業 テレビのための精神分析入門」
最後の授業は2010年1月18・25日に行われた講義をそのまま掲載している。なお、この講義はNHK教育テレビにも録画放送にて放映されたという。
テレビ番組から映し出される「精神」はどのように映し出されているのだろうか、あるいはテレビ視聴者向けに精神分析とは何かを分かりやすく解説されているだけではなく、現在の状況にあわせた精神分析の考察も織り交ぜられている。
Ⅱ.「最終講義 <私>の精神分析」
昨年2月28日に行われた最終講義を収録している。最終講義にちなんで、著者の専門である精神分析の研究と自らの生い立ちを織り交ぜながら、後世に何を伝えたかったのかを取り上げている。
Ⅲ.「「精神分析か芸術か」の葛藤」
フロイトの精神分析をもとに、フロイトが著者自身を嫌っていると思う理由について述べている。これは2009年の9月と12月に行われた講義を編纂したものである。
精神分析の研究は19世紀後半から始まってから150年以上経つ。おそらく私たちの生活と密着しているだけではなく、「心の世紀」と呼ばれる現代の中ではもっとも需要の高い研究・学問の一つである。著者はその学問の研究を続けて約45年の結晶が本書にぎっしりと詰まっている。
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