歴史を変えた火山噴火―自然災害の環境史

日本は「火山大国」と呼ばれるほど火山が多い、有名どころでは現在も噴火を続けている桜島、「霊峰」と呼ばれる富士山、そして北海道の大雪山(旭岳)が存在する。

火山噴火でもっとも桜島以外で直近のものでは2000年の有珠山(昭和新山)の噴火や三宅島の噴火が挙げられる。

本書では様々な火山噴火を挙げているが、それが私たちの歴史にどのような影響を与えたのかを考察している。

第一章「火山噴火と人類」
ここでは火山の原理、火山活動、火山噴火による被害など、火山に関する基礎知識を伝授している。

第二章「「火山の冬」と気候変動」
火山噴火により環境が破壊される、というロジックについて解き明かしている。火山噴火により火砕流や泥流、土石流により、周囲の森林や動物を破壊するためである。同時に火山噴火により、大量の火山灰が広範囲にわたって降り注がれる。降り注がれた火山灰が太陽光を遮ることにより、夏でも寒く、冬はもっと寒くなるような「火山の冬」ができてしまう、というわけである。

第三章「火山噴火が衣服を発明した」
本章のタイトルを聞くだけでも疑わしく思ってしまう。しかし服が誕生したのは約7万年前頃、それと同じくしてトパ火山が大噴火し、その火山灰により急速に寒冷化したという。そのことを考えてみると関連性はあるといえる。

第四章「九州南部の縄文文化を崩壊させた鬼界カルデラ」
かつて九州南部では独自の縄文文化が栄えていたのだという。そのことだけでも初耳であるが、その文化そのものを失ったのが、鹿児島県の竹島・硫黄島に位置するところの「鬼界カルデラ」と呼ばれるところの火山噴火にあるという。

第五章「文明を崩壊させたサントリーニ火山」
サントリーニ火山はギリシャ本土から200キロ南に位置する火山島である。その火山島には紀元前に「ミノア文明」というのが存在した。しかしその文明もサントリーニ火山の大噴火により、島中火砕流に呑まれ文明が崩壊したのだという。

第六章「タイムカプセルのヴェスヴィオ火山」
「世界で有名な火山」というと皆さんはどの山を想像するのだろうか。「霊峰」と呼ばれる富士山か、あるいは世界でもっとも高い火山の「キリマンジャロ山」だろうか。
しかし「歴史上」という言葉を一言加えると、イタリアの「ヴェスティオ火山」であるという。
この火山が歴史上有名になったのは紀元前800年の噴火にある。約3000年前に起こった噴火であったが、古代の大災害の中でも最も史料が多く、かつ克明に残されていたことにより、数多くの歴史本に取り上げられたほどである。

第七章「西暦五三五年に何が起きたのか」
歴史の中で地球が最も大きな異変をきたしたのが「535年」である。これも大噴火で起こった、火山灰による「寒冷化」により、異常寒波が起こったのだという。

第八章「夏がこなかった年」
今では滅多に起こらないのだが、「夏がこなかった年」があったのだという。日本でも有名なものでは1993年、記録的な冷夏により、コメが大凶作に陥り、タイや中国からコメを輸入せざるを得なくなったほどである。
それに限らず、第二章などでいったように大噴火により、夏の暑さがこなかった年も他にあった。

第九章「史上最大級の噴火」
史上最大の噴火は1883年、インドネシアのズンダ海峡にあるクラカタウ島にある3つの火山が一度に噴火した時である。火山灰はおろか、回りの島々に火砕流や噴火による衝撃による大津波も押し寄せ、インドネシアどころかコロンビアや日本など、約10カ国25万人の命を奪った。
約40年後に東京で起こった「関東大震災」と2倍以上の死者を出した大災害であった。

第一〇章「二〇世紀の火山噴火」
20世紀の噴火ではいろいろなものがあるが、日本では1991年の雲仙岳、2000年には有珠山や三宅島がある。

自然災害はいつ起こるかわからない。昨年には東日本大震災や台風、そして現在進行形では豪雪もある。火山や地震がよく起こる日本では、その自然の中でどのように防止するか、そしてどのように教訓にするか、本書は火山活動と歴史の本であるが、そのエッセンスも詰まっている印象がある。