若者の労働運動―「働かせろ」と「働かないぞ」の社会学

昨今「貧困」や「格差」に関して中心に挙げられているのは私達若者世代である。そういった世代の労働運動も昨今耐えないが、その意見は二部している。本書のサブタイトルにあるのだが、かたや「働かせろ」というもの、かたや「働かないぞ」としているものその二つが挙げられる。本書では昨今の若者労働事情、そして労働環境の変化、そして労働に関する考え方の変化について社会学の観点から考察を行っている。

第1章「労働社会の変容と「若者の労働運動」」
労働社会の変容は今に始まったことではない。高度経済成長で中心となった終身雇用もあれば、バブル崩壊以後には
「成果主義」が採用されるようになった。そして現在では「企業」にいるだけではなく、労働中心とした社会への批判もでてきており、そういった労働運動も起こっている。

第2章「「若者の労働運動」は何をしているのか―「ユニオンぼちぼち」の事例から」
本章ではその労働運動を行う機関の一つとして「ユニオンぼちぼち」を取り上げている。名前からして関西のように見える通り、京都に本部を置いている。

第3章「企業社会のオルタナティブ―首都圏青年ユニオンの事例から」
では首都圏ではどのようなユニオン活動があり、それを行っているのかを紹介している。若者世代の労働運動の意味は労働環境改善、というよりもむしろ「コミュニティ」や「居場所探し」という意味合いも込められている。

第4章「経験運動としての「若者の労働運動」―フリーター全般労働組合の事例から」
「経験運動」というと仕事の経験、ということに目を向きがちであるが、本章でいう「経験運動」は労働運動としての「経験」を言っている。フリーターやニート、さらには派遣労働者の情報共有も意味している。

第5章「「労働/生存組合」の誕生―フリーターユニオン福岡の事例から」
本書では福岡を中心に活動しているフリーターユニオンを紹介しつつ、フリーターといった「労働」と「生存」を標榜したユニオンである。
ここも労働状況改善、というよりもむしろ「働かない」ということを語り、それを前提に権力に対してNoと言う機関として、そこに通う人たちはどのような心境や環境の中で育っていったのかがよくわかる。

かつて労働についての本を読んだときには、労働組合について、私たちの世代は関心が薄れ、労働組合そのものは弱体化しているのではないか、と書いたのだが、本書を見る限り「形」や「主張」そのものは変化してはいるものの、労働組合自体は滅びたわけではない、というのがよくわかる。そういった一冊である。