編集者の危機管理術~名誉・プライバシー・著作権・表現

月に1回以上セミナーなどのイベントに出没する私は編集者にお会いすることがある。編集者の方々の話を聞くと、編集者同士、もしくは作家とのやりとりに関するエピソードなど、ブログでは書けないような四方山話もある。その話を聞くだけでも面白い。

私事はさておき、編集者の仕事は作家が書かれた話を編纂する、もしくは出版社の企画会議に出すなど様々であるが、その編集者も著作権やプライバシーなどの「危機管理」の仕事もあるのだという。本書は著作に関しての「負」の側面をいかに管理するかを現役の編集者の観点から伝授している。

第1章「「名誉毀損」「プライバシー侵害」訴訟は編集者の宿命」
雑誌や書籍など、本人や団体の名誉を傷つけたとして訴訟を起こしたケースも多々ある。ジャニーズや警察などの個人や団体が起こっている。とりわけコラム・オピニオン誌が多い、というかほとんどである。

第2章「盗用か、引用かー著作権侵害の境界は微妙」
論文などの本には「引用文献」や「参考文献」などが挙げられる。しかしその引用一つで「盗用」にあたり、「著作権侵害」となり、罰金刑、最悪の場合「懲役」となってしまう。
本章では「引用」と「盗用」の境目について「引用」など、著作権のルールを元に紹介している。

第3章「「商標権侵害」「不正競争防止法」トラブルって何だ?」
「商標権」に関しては「昨年にそれに関する本」について取り上げているため、ここでは割愛する。もう一つ「不正競争防止法」であるが、この法律を見る度に不思議な疑問が生じる。類似商品や競合商品があるのに、訴えられるケース・訴えられないケースが存在しており、法律的にも明確に違法か適法か、というのもグレーゾーンになるものもおおいのでは、と考えられる。

第4章「「景品表示法」「製造物責任法」「薬事法」の落とし穴」
雑誌の中には「読者プレゼント」など懸賞企画があるのだが、その方法にも法律が存在する。「景品表示法」である。たとえば懸賞の掲載方法についてもこの法律で制定されており、公正取引委員会から糾弾された例も存在する。また入賞者に提供できるものの金額についても厳正に決められている。
さらに本章では景品表示法より事例は少ないものの「製造物責任法(PL法)」や「薬事法」についても取り上げている。

第5章「コミックはトラブルの百貨店と覚悟せよ」
雑誌の記事もさることながら、コミックなどのマンガも名誉毀損、歴史歪曲、さらには宗教団体からの抗議、さらには児童ポルノ法などで糾弾される例が多い。本章ではその中でも有名な事例をいくつか紹介している。

第6章「文庫とコミックは「差別・不適切表現」の宝庫だと思え!」
文庫本やコミックは私自身も読むのだが、「ステレオタイプ」のごとく、はっきりとした表現になることが多い。そのせいか、差別を助長することもあれば、そのことにより市民団体などから抗議されるケースも少なくない。

第7章「最強の編集者は「指摘・抗議・クレーム」への対応はうまい」
前章までの部分を見てみると、コラム・オピニオン誌やコミックの編集者ほど、クレームにさらされる事例は少なくない。編集者の中には「どこ吹く風」という人もいるが。またそれ以外の編集者のなかにも、前述のようにクレームの嵐に見舞われている人もいるかもしれない。本章ではそんな人たちでも、そうではない人たちでも最低限は身につけておきたい危機管理術を紹介している。

新しい息吹は見せつつあるものの緩やかなスピードで進化している「電子書籍」。これから「電子書籍」の時代がくる、といわれているが、現実はそれほど大きな進化とまではいっていないようである。その「電子書籍」と呼ばれる時代だからでこそ、著作権などの「危機管理」は一層強く叫ばれるようになる。このような時代だからでこそ編集者に限らず、これから著書を出そうとする方にも、「必携」と言える一冊である。