フツーの子の思春期―心理療法の現場から

人には誰しも「思春期」が存在する。男では中学生~高校生の頃、女では小学校高学年から中学生の頃までの時期を指す。もっとも心的にも、感情的にも揺れ動く時期であり、親や他人に対しても反抗的になり、親も当人もどう接したらよいのかわからなくなる。

子供にとってみれば「フツー」だが、大人との「ふつう」とは大きな隔たりが存在するために、思春期に大人などとのいざこざがある。
本書はその「フツー」と「ふつう」の違い、さらに思春期の今昔について取り上げられている。

1.「「ふつうの子」と「フツーの子」」
大人の思う「ふつう」と、今思春期にある「フツー」の隔たりは大きい。しかしこれは「時代の流れ」と言えばそれまでであるが、両者それぞれが置かれている環境や経済などを考慮して考えると「隔たり」があるのは当然といえる。
しかも思春期も最初に言ったような親とのいざこざが中心となるような「反抗期」ばかりではない。周りとの「友達」ができない、もしくはうまくコミュニケーションがとれない、といった要素も重なったことにより、親は思春期の子供にどう接したらよいのかわからなくなってしまった。

2.「女の子たちの思春期」
「隔たり」の中でもっとも大きな要素は「インターネット」の隆盛である、バーチャルでありながら不特定多数とのコミュニケーションを確立することができる反面、「リアル」と「ネット」の線引きがわからない時代にふれることにより、心の闇をネットに置いて、リアルでは他愛のない触れあいにする、もしくは距離をとった人間関係を演じるといった現状もある。本章ではそのようなことを実際に行った、ある少女の事例を紹介している。

3.「思春期とイメージ」
思春期にふれられる「アイドルグループ」、さらには「冬ソナ」を代表するドラマの感情移入と興味・話題に関して、思春期時代の「表現」についてを取り上げている。これはアニメにおける「嗜好」についても言えることであり、「アイドル」「ドラマ」「アニメ」などを題材としたときの「興味」が大きな武器にもなれば、リアル友達の「足枷」になることもある、ということを知らされる章と言える。

4.「思春期と超越体験」
最近では「中二病」もしくはネット・スラングとして「厨二」と取り上げられている最近の思春期に起こる言動や考え方について考察を行っている。
「中二病」は「思春期の少年少女にありがちな自意識過剰やコンプレックスから発する一部の言動傾向を小児病とからめ揶揄した俗語(wikipediaより)」と表されている。
「超越体験」はある種の「デジャヴ」とも言えるものであるが、それが夢と現実が重なりあうことによって、大人ではとうてい理解できないような、ある種「奇行」ととらえかねないような考えや行動を起こすこともあるという。

5.「思春期と心理療法」
その「フツーの子の心理療法について取り上げているが、この一連の「思春期」を「発達障害」などの病気として扱われることも少なくない。本章はその現状についてもふれられている。

時代が変わるとともに「思春期」の置かれる状況や傾向も変わってくる。その変化を親の世代は「正常」なものか、「異常」なものかをとらえる人もそれぞれである。
しかしスクールカウンセラーの立場から微妙な心情を持っている子供たちの現状がどうであるか、それを伝える必要がある、その使命を本書、そして著者は帯びている。私たちは今の子供たちを知る必要がある。本書はそれについて警告をした一冊と言える。