変革期の地方自治法

地方自治そのものが注目され始めたのは1999年の「地方自治法」改正にある。それ以前にも「地域振興券」など「地方」にスポットライトを浴びる機会はあったものの、最近ではメディアの注目も増えていることから地方自治の改革がこれまで以上に重要視され始めたと言っても過言ではない。あれから10年以上の月日が流れ、メディアから取り上げられた地方自治は「大きく変わった」という感覚があるのだが、実際はどうなのか、本書ではこの10年以上の変化とこれからについて分析を行っている。

Ⅰ.「進む地域自治の改革」
地方自治体の改革はよい側面でも悪い側面でも変化をしている。その中でも悪い側面では2006年に北海道夕張市が財政破綻をし、大阪府は2008年に「財政非常事態宣言」を発表した。
さらに地域主権の強化や「道州制」といった地域集権などの改革提唱も行っているだけではなく、政府もそういった方向に向けて進んでいる現状がある。

Ⅱ.「変わる自治体」
戦後日本における市町村は、日本国憲法によって「地方公共団体」という伝統語がつくられ、メディアも追随して使われ始めた。やがてそれが「地方自治体」、もしくは「自治体」と呼ばれるようになった。それだけではなく1999年に「合併特例法」ができ、その7年後あたりに多くの市町村が合併された。当時私が住んでいた北海道では平日夕方に「どさんこワイド」が放送されているが、その後ろの数字は北海道の市町村の数を表しているため、ほぼ毎日のように番組名が変わっていったことを思い出す。

Ⅲ.「地域の自治権を自立させる」
条例や法令など、法律以外で縛られる「規則」について自治体の自立や主権はどのように変化していったのかを分析している。本書はあくまで「自治法」の変化にまつわる一冊であるため、本書の根幹について分析を行っていると言っても良い。

Ⅳ.「住民協働時代の議会と首長」
「住民協働」という難しい言葉が出てくる。簡単に言えば「住民」と「自治体」の両方の関係で共に協力試合ながら働くということを表している(そのままの意味であるが)。
そのことを念頭に置きながら住民と首長、住民と議会、議会と首長の利害関係とその関係の中から住民参加や情報公開の現状とこれからのあり方を論じている。次章では実践例を紹介しているためここでは概要にとどめられている。

Ⅴ.「住民協働の実践例」
実践例として良例を取り上げられている、かと思いきや住民訴訟や指定管理といった、どちらかというとネガティブな部分での実例を取り上げている。しかし情報公開や管理といったところでは重要な部分であることは間違いない。

地域の文化やそのものが変わっていくが、法律もふくめた制度も同時に変化をしていく。「地方自治法」の大改正が行われて12年の月日が経って、自治体の置かれている状況は大きく変わっている。その変化で自治体はどこに進むべきか、法律・制度の観点からそれを本書で示している。