経営者・平清盛の失敗 会計士が書いた歴史と経済の教科書

今年の大河ドラマは「平清盛」である。しかし放送開始当初は兵庫県知事が「汚い」と評価して物議を醸しただけではなく、内容も「難解」であるという批判もあり、視聴率も過去最悪となってしまった。ただ歴史学者などの識者には好評であることを考えると、「玄人受け」の大河ドラマといえる。

その大河ドラマで話題となっている「平清盛」だが、平安時代末期に絶対的な権力を持ったものの、わずか数年で瓦解することとなったが、その原因はいったいどのような物なのか。本書は「会計」「経営」の視点から失敗の本質について考察を行っている。

第一章「教科書にはない日宋貿易の真相」
平清盛の行った功績の一つとして「日宋貿易」が挙げられる。その中で「巨万の富」を得たと言われているが、実は平氏の崩壊の引き金となった。
本章ではその日宋貿易のカラクリと成立したいきさつについて述べている。

第二章「日本経済史歳大のミステリー、「宋銭」普及の謎」
さてこの崩壊の引き金となった「日宋貿易」で著者が着目したのが「宋銭」と呼ばれる物である。「宋銭」とは簡単に言うと、

中国・北宋代に鋳造された貨幣である銅銭のことである。また、宋代には鉄銭も鋳造された(辺境部である四川・陝西において、遼・西夏への銅の流出を防止するために、銅銭の所有・使用一切を禁じられて代わりに鉄銭が強制的に流通させられたため)が、一般的には、圧倒的に多い銅銭のことを指して宋銭と呼んでいるwikipediaより)」

である。その宋銭を流通させて、経済を発展させることにより平家は財政的な観点から支配をしようと目論む。その結果「宋銭」に対する信用を得ただけではなく、通過普及や通貨偽造といった善悪双方の側面から通貨普及の草分けとなった。

第三章「平家滅亡の真犯人、そして清盛の「失敗」」
しかし、平家は「宋銭」普及からわずかの間で滅亡の道をたどっていった。源氏との「壇ノ浦の戦い」によるものだが、それ以前に平家に対して不満分子がくすぶっていた。その原因は「宋銭」であった。
ではなぜ「宋銭」が引き金となったのか。それは「宋銭」そのものの輸入をするためのルート、そして季節風により時期が限られていることにある。さらに深く問いつめていくと「通貨のコントロール」と言うのがそもそもできなかったといえる。

第四章「経営者・平清盛」
平清盛が宋銭の政策を実行し、日本で初めて銅銭が流通したことは前章まで述べたのだが、清盛が行った政策はそれだけではない。本書は「日本」そのものを経営する「経営者・平清盛」として伊勢・博多・薩摩・神戸の4カ所で行った改革について取り上げている。

大河ドラマ「平清盛」は現在も放送中であり、平清盛に関する本は様々なところで取り上げられているが、毎年の様に歴史上の人物が注目を集め、それに関する書籍も出てくる。ある種一過性の「ブーム」である様相だが、あくまでそれを「ブーム」で終わらせず、様々な観点から触れ続けることにより、歴史も歴史上の人物がおもしろくなる。本書は誰も見ることのなかった「会計」の観点からとらえているところにユニークさがある。