「医療」の形は多様化している。本書で紹介される「在宅医療」や「地域医療」もまた然りである。
本書の舞台は北海道夕張市、今から6年前に財政破綻をした市である。破綻を宣言した直後から北海道を中心に様々な特集や応援企画が組まれ一時大盛り上がりとなった。
現在は長きにわたる財政再建の真っ只中にある。
著者はその夕張が財政破綻をした頃に「ささえる医療」をスローガンに「在宅医療」や「地域医療」を始めた。その5年間を綴るとともに、本来ある「地域医療」「在宅医療」、そして「医療」そのものとは何かを綴っている。
第一章「4年間を振り返って」
財政破綻とともに、人口に対する高齢者率も北海道の市町村の中で最も高い比率となった。
著者の4年間はまさに「いろいろ」あった。行政や他の医師らとの対立・諍い、プロジェクトの内部分裂、停滞・衰退、そして医療問題との直面など、著者自身も「医療」そのものの葛藤もあった。
第二章「在宅医療の時代」
高齢者は病院に行くにも寝たきり、もしくは歩けないなどのリスクにより病院に行くことができないこともある。そういった方々も多くなってくると、「在宅医療」の需要も広がる。医療インフラの広がり、そして地域や医師・患者の距離感についてを綴っている。
第三章「公としての医療」
医療は何として機能しているのだろうか。「官」のためかと言うと、法律などのバックアップを行うだけであり、中心地にいるわけではない。「民」はビジネスとしての支店でしか無く、採算のとれない過疎地まで医療は届くことが無い。
では「公」はどうか、利益は少々でも将来の為に人を育てる、それだけではなく過疎の地域まで行き届き、決して人任せでなく、住民が自ら参加するような医療こそ、現在の医療としてあるべき姿であるという。
第四章「震災に活きる地域医療」
夕張から舞台を変え、震災で甚大な被害を受けた場所の一つである、岩手県藤沢市で地域医療・在宅医療の支援を行ったことを綴っている。
第五章「時代の中の地域医療」
戦後医療はどのように発展したのか、そしてインフラとしての医療は何なのかという問いについて答えている。
第六章「医療と教育」
医療と同じインフラとしての役割を担うのが、「教育」について綴っている。
第七章「これからの夕張医療センター」
夕張市と夕張医療センターとのこれからについて綴っている。それは地域医療と在宅医療のこれからと重なっているのかもしれない。
財政再建都市としての夕張、そしてその夕張の地で「地域医療」「在宅医療」のあり方を考え、実践している、そして「支える」ための医療への発展としての希望とビジョンを見いだす為の一冊と言える。
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