海辺の家族―魚屋三代記

神奈川県大磯町
茅ヶ崎・平塚と同じく東海道線が停まり、「大磯ロングビーチ」が有名である。ワンマン政治で名を馳せた吉田茂の別荘があり、俗に言う「大磯御殿」と呼ばれていたほどである(政界でも隠語として「大磯」があったほど有名である)。吉田茂に限らず伊藤博文や西園寺公望も別荘を持つなど避暑・避寒地として別荘を建てる要人も多かったとされている。

大磯のことはここまでにしておいて、本書はその大磯で営むある鮮魚商、「魚屋」の三代記である。明治から大正、昭和から平成の時代にまで魚屋の人間模様を描写している。

前述の通りであるが、ささやかに営まれながら100年以上の歴史があり、その長い長い時代の波にさらされながら人間もようや状況が変わり、閉店の危機に遭うことも少なくなかった。その中でも家族や地域の支えによって図太く続けてきた。

家族・地域の暖かみと大磯の歴史、そして時代の変化を見ることのできる観点からしてなかなかおもしろい一冊といえる。