「感情労働」という言葉はあまり聞き慣れないが、笑顔を売るようなサービス業の方々のことを指すとなると確かにその通りかもしれない。日本の職業で言うと看護師やCA、介護士など人との接客に関わる方々の労働のことを指している。その感情労働についても様々な「法」とそれらの「解釈」がまとわりついてくる。本書はその「感情労働」について、とそれを守る、あるいは規制する「法律」との関係について考察を行っている。
第1章「「感情労働」とは何か?」
「感情労働」についての定義はいったい何なのか。本書には、
「喜怒哀楽等の自らの感情をコントロールして、表に出すことなく物事を冷静に処理したり、相手の気持ちに配慮した対応をする労働」(p.4より一部改変)
としている。いわゆる「ホワイトカラー」と言われるサービス業が中心であり、かつ「営業スマイル」など、感情面のサービスを求められる労働のことを指している。
しかし自分の本来持っている感情を封じ、長時間顧客に配慮した感情、いわゆる「仮面」をかぶり続けた状態になると、感情面の歪みが起こり、それにより精神的な病に陥ることもある。さらに言うと、近年では「モンスター・ペアレント」や「モンスター・ペイシェント」、さらにはアカハラやパワハラなどの「ハラスメント」も横行しており、感情労働そのものがその被害の温床として横たわっている。
第2章「感情労働の諸相~いくつかのケース~」
感情労働は感情面のコントロールする、さらにそれが長時間続くことによってストレスといった心的負担も大きくなる。本章では「介護士」「保育士」「看護師」を取り上げている。
第3章「感情労働の法的分析」
ここでようやく「法」との関係についての考察である。ここでの「法」は簡単に言うと「民法」や「労働基準法」が中心となる。労働時間や報酬に関する細かいことは「労働基準法」など労働に徳化した法律であるが、労働や報酬など大まかなことに関しては「民法」に明記している。双方の法律と「感情労働」にまつわる統計、主に残業ややりがいといった労働問題でよく取り上げられる統計が紹介されている。
「感情労働」は用語としては聞き慣れないものの、意味を見ていくと、私たちの周りにごくあふれている接客を中心とした労働のことを指している。その方々の労働問題は深刻化しているのは本書のみならず、経済誌やオピニオン誌でも頻繁に取り上げられている。それ故か、タイトルに斬新さはあったものの、労働問題の傾向と考察という印象が強かった。ともあれ、近年の労働環境の中で横たわっている問題の多くは「感情労働」にあることを発見できる一冊と言える。
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