サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在

シリーズ「『宮台真司』の思考を解剖セヨ!」第6弾はサブカルチャーである。これまで社会にまつわることばかり取り上げてきたのだが、今回ほど私が取り上げたいものはない。宮台氏は社会学者であるが、サブカルチャーにまつわる言及も多い。

その言及の源流を探るべく、1992年~1993年に「アクロス」という雑誌で連載されたものから2007年版に加筆された本書をみてみることとする。

第1章「少女メディアのコミュニケーション」
主に少女マンガのコミュニケーションを中心にしているが、それだけではなく「少女」を元にした作品も取り上げられているため、時代の変遷は戦前にまでさかのぼっている。「乙女」から「少女」といった「女らしさ」「少女らしさ」にまつわる独特な表現から読者と作者との「コミュニケーション」の変遷を描いている。

第2章「音楽コミュニケーションの現在」
「音楽」のジャンルはJ-POP、歌謡曲、ロック、ニューミュージック、クラシック、ジャズなど様々である。単一のジャンルでも「恋愛」や「政治」などテーマをカテゴライズすると、「音楽」の幅広さと奥深さが窺える。
その「音楽」にまつわる「コミュニケーション」は、歌詞や曲における「私」と、それを聞いている「私」とのやりとりにある。そのやりとりも「フォークソング」から「ニューミュージック」、そして各年代のポップスにと変化を遂げていく。

第3章「青少年マンガのコミュニケーション」
青少年マンガは70年代以降から40年にわたる間、著しく成長を遂げていった。その一方で「有害コミック」の議論も絶えず、評論家のみならず、政治的にも論争の的となっている。
その青少年マンガにまつわる「コミュニケーション」の変遷を追っている。「コミュニケーション」とあっても少女マンガとはひと味違った「恋愛」や「戦い」、あるいは「友情」にまつわるものまである。

第4章「性的コミュニケーションの現在」
前章までの内容をみるからに「エロマンガ」のイメージもあるかもしれないが、本章では「広義」の「性的コミュニケーション」についての考察を行っている。「広義」といっても「絵画」や「ヌード写真」「AV」「風俗産業」などを指している。

第5章「サブカルチャー神話解体論の地平」
そもそも本書における考察の対象は1970年代~1990年代が中心である。その範囲となった大きな要因は「新人類」と呼ばれるものがキーワードになっているのだという。

実は本書の作品は1993年に「単行本」として初めて出た作品であるが、それ以前に著者の修士論文も同様のタイトルであった。1982年の話である。そのときから増補版が出た25年もの間でサブカルチャーの環境は劇的に変化している。少なくとも「文化」の副産物と呼ばれていた「マンガ」「アニメ」といった類は国外でも認知され、人気を呼び、昨今でも「COOL JAPAN」という賛辞が送られ続けている。そのような環境から論者の中には「ポップカルチャー」という言葉を用いる方もいる。

サブカルチャーの進化とともに修士論文から歩んできた25年が単行本、そして増補版とともに「進化」を遂げてきた著者の結晶と言える一冊である。再増補になるのか、そしてそうなるとしたらどのような進化になるのか、それも含めて期待したい。