同期生~「りぼん」が生んだ漫画家三人が語る45年

仕事の世界にしても、本書にある漫画の世界にしても、あるいはそれ以外の世界にしても「同期」はある。しかもその「同期」は親友にも戦友にもなりやすくある。

本書は毎年行われている「りぼん新人漫画賞(以下:新人漫画賞)」の第一回入賞者の3人が、それぞれの漫画観と同期たちの思い、そして編集者との出会い、そしてそれぞれの人生について綴っている。

第一章「一条ゆかり」
「砂の城」「有閑倶楽部」をはじめ少女コミックでミリオンセラーを連発している一条ゆかり。
漫画家になりたく、高校三年の時に修学旅行がてら出版会社へ面接に行くほどの行動力を見せた。
高校卒業後、単発で漫画作品を描いた後、上京したが案の定金欠に悩まされた。そこに飛び込んできたのが「新人漫画賞」である。
その漫画賞に入賞し、漫画家としての連載が決まったのだが、そこからもりたじゅんや弓月光との関係もはじまった。もりたじゅんとは「ライバル」、弓月光とは「戦友」というような感覚があったのだという。
そしてベストセラーを生み続け、現在漫画家活動を一時休止し、漫画から離れた生活をしている。

第二章「もりたじゅん」
もりたじゅんはデビュー前、3人の中ではもっとも「漫画」とは無縁の生活を過ごしていた。むしろ絵画が中心であり、それ故か画力も秀逸だった。
大学も芸術学を学び始めたのだが、大学独特の雰囲気に絵描きとしての道を閉ざしそうになるほど衝撃を受けた。その衝撃から救ったのが漫画であり、「新人漫画賞」であった。そこに入賞したが、その入賞パーティーにて二人に出会った。当時もりたじゅんは大学生、一方の一条ゆかりと弓月光は高校生だった。
やがてデビューしたものの、両者と違いあまりパッとせず、むしろ置いて行かれるような感覚に陥ったという。その後「りぼん」でヒットを生み出したが、それ以上に大きな転機となったのが「サラリーマン金太郎」などベストセラーを次々と誕生させた本宮ひろ志の出逢いであった。
やがて結婚し、子宝にも恵まれたが、漫画家として悩みだし、ついに引退。現在は主婦として漫画とは一歩離れたところで、漫画の現在を思い馳せている。

第三章「弓月光」
3人の入選者の中で唯一の男性。もっというと現在でも数多くのベストセラーを生み続けている漫画家とも言える。
「新人漫画賞」に応募する前から、様々な「漫画賞」に応募し、受賞していたが、ある編集者の一言から「新人漫画賞」に応募した。
まもなく「りぼん」や「マーガレット」などの少女誌で単発・連載などを重ね少年誌へ。弓月光の漫画はいくつか読んだことはあるのだが、性的な描写をしながらも「コメディ」と呼ばれるような独特なタッチがあるので「少年誌向け」でも「少女誌向け」でもない、むしろ両方に通用するような画風とおもしろさを換え備えていたことを覚えている。
様々な著作を生んだせいかどうかはわからないが、同じく新人賞をとった一条ゆかりともりたじゅんからは「本当に漫画が好き」という印象が強い。

「第一回りぼん新人漫画賞」が開催されたのが1967年の時である。当時は漫画そのものも急成長を遂げる前であり、ワンパターンの印象を持つような作品も目立った。あれから45年、それぞれの道を進んでもどこかで逢えば、近況報告とともにその思い出話がでてくる。そしてその思い出が「漫画家」としての原動力となり、「りぼん」としても大きな転機となったのは間違いない。

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