女ノマド、一人砂漠に生きる

著者の常見様より献本御礼。

著者は単身エジプトへ渡り、ラクダを連れて砂漠の中で、移動しながら暮らすと言われる「ノマド(遊牧民)」の生活を送った。その生活は「自由」というようなイメージとは裏腹の過酷な生活だった。

本書は様々な場所を旅しながらエジプトに行き着き、そして過酷なノマドライフの中で得たもの、失ったもの、見出したものを遊牧民一族との生活の中で綴っている。

第Ⅰ部「女ひとりの砂漠」
著者は小さい頃から内気だった。その性格を変えるべく会社を辞め、フォトジャーナリストを目指すため、海外へ。世界一周の途中地点のエジプトで自分の中でしっくりくるようなものを見出し、住み続けることとなった。
日本とは異なる言語・宗教・環境である国で、かつ日本とはかけ離れているほど恵まれていない国であった。しかし人間としての「温かさ」を直に感じることができ、親近感がどっと沸いた。
そのエジプトで生活をともにしたのは、ある遊牧民の女性である。その遊牧民生活のなかで砂漠の生活、イスラム教、水や食糧のありがたみを知った。

第Ⅱ部「うつりかわり」
安定した収入や豊かな生活はその裏で「失っているもの」が多い。しかし私たち日本人が日本に住み続けている限り、気づくことはないということを思い知らされる。
移り住んだ先によっては水も食糧もあり、かつ様々な人と出会うことができる。今の日本にほど近くなるような環境であるが、大切な「心」が失ってしまう。そしてこれは日本、それも都市部といった人口が密集しているところでは如実に表れていると思えてならない。
それだけではなく、本章では結婚観や結婚式についても取り上げられている。

第Ⅲ部「男と女」
イスラム教の国、というよりもエジプトの中での夫婦事情、そして「男」と「女」の関係はどのようなものがあり、結婚前後の「男」と「女」それぞれの人生は何なのかを知ることができる。

本書は2003年から3年間ほどエジプトに住んだ時のことを綴っている。日本とエジプト、一生住み続ける様な生活と移動しながらの生活、あふれているほどモノが豊かなところと水と食糧がとれるのがやっとと言える所、距離も価値観も宗教も違う場所で日本を見つめ、「自由」を見つめ、そして「生きる」ことを見つめている。一人の女遊牧民の出会いから9年、その間に見つめたことがここに詰まっている。そして日本人に対して、日本の中では気づかなかったことを投げかけるのもまた、本書の役目なのかもしれない。