栃と餅~食の民俗構造を探る

あけましておめでとうございます。
今年も「蔵前トラックⅡ」をよろしくお願いいたします。
新年一発目の書評はお正月にまつわる「お餅」についてです。

新年で最初に食べるもの、それはおせちと並んで「雑煮」である。雑煮の作られ方・食べ方は地方によって異なるものの、多くは「餅」を雑煮の中に入れて食べる。「餅」と言えば古くから雑煮のみならず、焼き餅にして食べる、「善哉」や「おしるこ」の中に入れて食べるなど食べ方をあげると枚挙に暇がない。元々もち米から作られているため「米食」の一部として挙げられるだけに、日本人にとっては親しみ深い。
本書はその「餅」を「栃」と呼ばれる木の実から作られる流れ、そして儀礼として、楽しみとして食べられる「餅」を取り上げている。

Ⅰ.「栃と生きるー生存のために食べる」
「食」はあくまで生存をするためにあるものである。しかし、食物は年中同じものを食べることができなかった時代は、四季折々の食物を採っては、工夫して様々な手法を用いて保存したり、味付けしたりすることによって、嘱されてきた。中でも「栃の実」は秋頃に採れる。場所も北海道・本州・四国などで採れる(九州でも少ないが採れるという)。その「栃の実」は正月に「栃餅」として食べられるだけではなく、お粥や粉にして食べられることもある。しかも保存期間も乾燥などを行うことによって6年ほどになるのだという。

Ⅱ.「餅の霊力ー儀礼の場で食べる」
生きるための「食」だけではなく、宗教やイエ・ムラの慣習における「儀礼」としての「餅食」があるのだという。そこで思いつくのが、ちょうどこの時期に飾られる「鏡餅」がある。
本章では鏡餅も紹介されているが、むしろ家内安全や豊作祈願などの願いから祭られる食べ物、食べられるものなどを紹介している。

Ⅲ.「香り、色、食感ー楽しんで食べる」
「餅」とひとえにいっても食べ方は様々であることは暴騰でも書いたのだが、本章ではその食べ方の種類を「色」「食感」「香り」と分けている。しかも餅と季節の山菜などを組み合わせており、「食を楽しむ」ことの伝統を知ることができる。

今では飽食の時代と言える。餅にしても切り餅がスーパーマーケットやコンビニエンスストアで手軽に手に入る時代になった。かつて日本は自然と共生・順応しながら食を楽しみ生きてきた。本書にある伝統をそのまま受け継ぐことは無理であっても、形を変えて受け継ぐこともできる。むしろそれこそ「伝統」といえるのかもしれない。