Sign with Me~店内は手話が公用語

商品が多様化するように店もまた多様化する。
様々な環境に置かれ、様々なハンディを持つことももはや珍しくない。耳が聞こえず、手話でしか話すことのできない、いわゆる「ろう者」もまたその一部である。
その「ろう者」の為のカフェが東京都文京区本郷に存在する。

その名も「-SocialCafe- Sign with Me」

本書はそのカフェが設立するまでの経緯を綴っている。そこには、日本が「バリアフリー社会」先進国と言えるのだが、それでもまだ構築できていない「穴」を映し出している。

第1章「聴者社会の息苦しさ~ろう者が働くというのは」
著者はこのカフェを開業するまで、じつに4回職を変えた。その中で健常者とろう者とのギャップ、そのギャップの中で就職活動でも苦労を重ね、ようやく就職した会社も挫折。その連鎖を4回繰り返した。しかし最後の4回目で自ら起業するきっかけを得た。

第2章「どん底から立ち上がる」
起業は出版と同じく「出産」と同じような意味合いをとることができるのかもしれない。簡単にいえば、ともに「産みの苦しみ」があるためである。
とりわけろう者の起業は、健常者の起業以上に偏見や差別との戦いもあり、苦労を重ねた。起業をしたい人は必ず読むべき箇所である。「産みの苦しみ」がこれほどまで克明に描かれた本はない。

第3章「ユニバーサルを目指した店作り」
そもそも著者が起業をするに当たっての「使命」はいったいどこからきているのか。それは「ろう者と健常者との「Win-Win」の関係を築く」ことにあった。
そのための出店や店作りに奔走した。予定通りにオープンすることができなかったが、何とか開店まではこぎ着けることができた。2011年12月の話である。

第4章「ありがとうの種」
ろう者と健常者とのコミュニケーション、さらにろう者の情報など様々な「バリアフリー」を実行すべく、新たな事業を展開している。

「ろう者」と「健常者」とのコミュニケーションの隔たりを解消すること、そして「ろう者」の「ろう者」による「ろう者」の為の働ける場の提供をし続ける。
章の中でも書いたように、本書の中で最も印象が強かったのは第2章である。ろう者の方に関わらず、起業をしたい人にとっては是非読むべき一冊である。