「人体部品産業」
日本にいる私たちにとっては想像すらできない市場が存在する。人の骨や臓器、血液や髪、精子や卵子、さらには人そのものにいたるまで売買されている。
誰もが目を覆いたくなるような市場はどのように蠢いているのか、世界の「闇」に潜む市場の真実が今、本書にて明かされる。
第1章「蹂躙される死体」
最初の舞台はインド。ある転落死した学生が死後から墓に入るまでのプロセスを描いている。そのプロセスの中で次章以降にあるような蹂躙されることが無いように気遣う。しかし蹂躙されることは避けられない。「検死」というものがある限り。
第2章「骨工場」
死後、火葬され骨になる。その骨を「骨格標本」として世界中に出回っているのだという。その生産元としてインドを取り上げている。
第3章「臓器売買の供給チェーン」
正直言って本章ほど生々しく、目で覆いたくなるような章はない。むしろ心臓に弱い人にとっては決してのぞかない方が身のためである。
臓器売買の現場について追っているのだが、まさに「闇市場」と呼べるような場のような印象がある。
第4章「養子縁組みビジネス」
かつて日本では「丁稚奉公」として子供でありながら親が何度も変わったことがあった。昨年逝去した三味線漫談家である玉川スミ氏も出生から14歳までに13回も親が変わったのだという。
日本では今となって聞かない話であるが、海外に目を向けてみると、かつての日本のような「養子縁組み」ビジネスがあるという。
第5章「私の卵子を売ってください」
卵子を売る女性も貧困にあえいでいる民や移民などを中心に後を絶たない。その卵子を売ることで「体外受精」をする人も後を絶たない。
第6章「政府公認の代理母産業」
6年前に向井亜紀・高田延彦夫妻の「代理出産」で話題となり、夫妻を題材にしたTVドラマまで放映するほどにまでなった。
日本では「代理母」で出産することは認められていないのだが、海外に目を向けてみると「政府公認」の代理母産業がある。そこは不妊クリニックとして代理母が監視下のなかで出産を待ち、利益を得るのだという。
第7章「商品としての血液」
日本では「献血」によって輸血用の血が提供される。世界を見てみると、日本と同じような「献血」を行っていることもあれば、中には「商品」として血液を売るような所も存在する。
第8章「人間モルモット」
新薬の実験のためにハムスターなどを「モルモット」として扱うことがあるのだが、海外では人間を「モルモット」とする国もある。日本では「非人道的」と扱われるのだが、売春のごとく高額な報酬をエサに人を募るのだという。
第9章「永遠の命を求めて」
医療や薬品の研究に勤しむ者の中には「永遠の命」を目指す人もいる。
それを求めて細胞を作り出したり、クローン人間を作ったり、というようなことまでやっているのだという。
第10章「黒いゴールド」
芥川龍之介の「羅生門」にはかつらを作るために遺体の髪を毟る婆が出てくる。
本章はその現象を現代にアレンジして再現しているように思えてならない。
私たちの生活の中で暗躍する「レッドマーケット」、またの名を「人体部品産業」と呼ばれている。その世界はあたかも地獄の坩堝の如く、欲望の為なら何でもあり、と言われるようである。
決して見てはいけないような市場、しかしその現実には目を背けることはできない。本書はその現実を突きつけている。
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