旅館やホテルなどでは「おもてなし」とよばれる振る舞いや考え方が根底にある。ビジネス書の中にはその「おもてなし」を「ホスピタビリティ」と呼ばれるものである。
「旅館」や「ホテル」にある日本独特の「おもてなし」は日本人のみならず、海外から旅行に来た方々からも評価をしているほどである。本書はその「おもてなし」を基にした経営についての理論を東北の旅館をケースに示している。
第1章「日本の歴史に見る「おもてなし」の精神文化」
そもそも「おもてなし」とはいったいどの様な意味で、起源はどこにあるのだろうか。調べてみると、
「① 客を取り扱うこと。待遇。
② 食事や茶菓のごちそう。饗応。
③ 身に備わったものごし。身のこなし。
④ とりはからい。処置。取り扱い。」(goo辞書より)
とある。起源はどこにあるのだろうか。その言葉となった「もてなす」「振る舞う」ことそのものは古代から特別な料理をごちそうするところからきていた。
第2章「おもてなし経営の考え方」
最初にも書いたように「ホスピタリティ」は「おもてなし」を英語化したものであるが、その語源についても「もてなす」人と「もてなされる」人が一体となることからきているのだという。
それにまつわる経営について「ザ・リッツ・カールトン」をケースに取り上げている。
第3章「旅館業への経営学的アプローチ」
「経営学」とひとえに言っても「ものつくり」やサービス業にまつわる分析や紹介が多く、本書のように「旅館」にフォーカスしたものは少ない。本章では「ものつくり」と「サービス業」双方の経営手法を取り入れながら、旅館業が最も強みをもつ「おもてなし」をいかに融合するかを説いている。
第4章「旅館の競争力構築―宮城の女将に学ぶ」
旅館の根幹を担う役割として「女将」がある。その女将がどの様な役割を持つことによって、旅館としての競争力を持つのか、そして経営とは一線を画した独自性や多様性をもって固定客をつくることができるかを示している。
第5章「旅館の時間再生と再生ファイナンス―家業から企業への転換」
バブル経済が崩壊してから、旅館の数は右肩下がりが続き、倒産した旅館も続出した。倒産の危機は免れても、財政的に「火の車」と呼ばれる状態にある旅館も少なくない状態にあるのが、現在の旅館業界の現状である。
しかし旅館の中には「火の車」から脱却したケースもある。本書はそのケースについて紹介している。
第6章「ホテル業の経営分析―帝国ホテルの事例から基礎を学ぶ」
宿泊まではしたことがないものの、勉強会のために帝国ホテルに訪れることはある。大概はロビーにいることが多いのだが、そのロビーでさえも外国人観光客やセレブなどが訪れるため、普段着でくる自分自身、「この格好で来て良いのか」という不安を抱くこともある。
本章では「帝国ホテル」について取り上げているが、サービスではなく、あくまで財務諸表をケースにして経営のあり方について紹介している。
第7章「ホテル・旅館業の社会的責任―東日本大震災における取り組みとCSR」
もはやCSR(企業の社会的責任)は企業にとっては当たり前のように言われている。旅館やホテルについても同様であるが、そのきっかけとして「東日本大震災」が挙げられている。
経営のあり方は、様々な形で変化をするとともに、旅館やホテルの経営も変わってくる。その中で既存の経営手法が通じるところもあれば、旅館・ホテル独自の経営もある。本書は「旅館・ホテル」における一般的な経営手法について取り上げているが、具体的な経営やサービスのあり方は[実践編]にて記されている。
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